平成15年度国際インターンシップ派遣の体験記

東 久美子(環境科学研究科、中東・中央アジア地域研究)

受入機関: ロンドン大学・東洋アフリカ学院・政治学部・中東政治学科、博士課程後期1年


ロンドン大学においてイラク政治研究者のトリップ教授の下で指導を受けました。ロンドン大学での修士課程でもお世話になったこと、またその頃から研究対象地が同じイラクであるということもあり、親身になって研究へのアドバイスや知人の紹介などをして頂きました。しかし、私がイラク・クルディスタンを対象にしているのに対し、教授は主にイラク中・南部、または政治理論を専門としているため、より私の興味に近い研究者を紹介してもらいました。

トリップ教授は、エクセター大学のイスラム研究所に所属するガレス・スタンフィールド教授を紹介してくれました。彼は国連の職員として最近までイラク・クルディスタンに滞在しており、研究対象もイラク・クルディスタンに限定されています。そのため、イラク・クルディスタンの現状やクルド自治政府の状態についての話を聞かせてもらいました。また、研究を進める際のアドバイスや現地に居住する国連職員、大学教授、イラク政府職員を紹介してもらいました。

学士過程の時にお世話になったマンチェスター大学のフェローゼ・ヤサミー教授にも指導を受けました。オスマン帝国の研究者ですが、イラクはかつてオスマン帝国の支配下にあったため、その時代のイラク・クルディスタンを研究する際の重要ポイントや資料に関するアドバイスを頂きました。

トリップ教授やスタンフィールド教授に紹介されて、イギリスに亡命中のクルド人集会に参加しました。ここでは、研究者や知識人のみではなく、あらゆる層の人々から話を聞き、またクルドの文化(音楽や詩、料理)に触れることができました。その場で知り合った同年代の人達とは現在もメールで意見の交換などをやり、生の意見を聞ける機会も得ました。また、イラク・クルディスタンの河川の水質を調査しているクルド人や、保健・医療に携わるクルド人から彼等の集めた情報や資料を見せてもらうことができました。

COEインターンシップを通して得ることが出来た人脈やアドバイス、資料などは、日本で得ることは難しいものです。クルド人と面と向かって意見を交換できる場は日本には早々ありません。彼等と今でも連絡を取り続けていることを考えると、COEインターンシップで得たものは、これから研究を進めるに当たって非常に有意義なものでした。