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平成15年度インターンシップ派遣体験記
ー リヨン工科大学 (ECL) ー
東北大学大学院 工学研究科 博士課程後期2年 伊藤 耕祐
 2004年3月6日〜30日の3週間余り、フランスのリヨン工科大学(Ecole Centrale de Lyon、以下ECLと略記)に滞在する機会をいただいた。研究関連は別途報告済みなので、本稿では街や大学の様子を中心に紹介しようと思う。
 リヨン(Lyon)はフランス第二の都市で、街の中心部は夜でも比較的治安が良く、旧市街地(Vieux Lyon)は世界遺産にも指定されているほどの、歴史あるたいへん美しい街である。Lyon郊外北部の丘陵地帯はワインで有名なボジョレー(Beaujolais)地区であり、その影響か「食の都」とも言われている。確かに、料理もお酒もお菓子もみな美味であった。
 ECLはLyon郊外北西部のEcullyにあり、一般の大学の3年次相当が一年生である。3年間で修士相当の学位が与えられ、研究室に配属されるのはそのさらに上の博士課程の学生のみである。したがって、卒論、修論はなく、その代わりに毎年企業や研究機関で1〜5ヶ月の研修が課せられる。一学年約350人(学生総数約1200名)で本学工学部の約1/3の規模ながら、学生の質と研究レベルは非常に高く、特にトライボロジーおよびシステムダイナミクス研究室(Laboratoire de Tribologie et Dynamique des Systemes、以下LTDSと略記)の研究規模は特筆すべきである(教授クラス13名、助教授クラス20名、その他のスタッフ約40名、博士課程学生約60名の総勢約130名)。この研究室はCentre National de la Recherche Scientifique (CNRS)という日本の産総研に相当する「国立科学センター」の研究部署と一体化しており、他の大学や研究機関と密接に連携して研究を行っているそうである。
 学生も含め、研究者はほぼ全員英語が堪能で、ここは英国か米国かと思うほどである。女学生比率は十数%というから本学工学部とあまり変わらないはずだが、なぜかLTDSは女性研究者に人気があるようだ(写真はその一部)。
 LTDSの目玉は、種々の装置を有機的に駆使して摩擦・摩耗メカニズムの本質に迫るAnalytical Tribology Groupであろう。J. M. Martin教授が率いるこのグループには、UHV Tribo-meterといって、UHV(超高真空下)で摩擦試験を行い、試験片を大気に暴露することなく引き続きAESおよびXPS解析が可能な試験装置がある(写真)。開発担当のDr. T. L. Mogne(写真左)が装置の改良からメンテナンス、学生の指導までを一貫して行っているため、現在JAXAから派遣されて滞在している岩木氏を「故障率の低さは特筆もの」とうならせる稼働率を誇る。この手の装置が世界的にも珍しいことと解析ノウハウの高さを考えると、ここでしかできない研究は多い。今回の派遣では実験は行わなかったが、共同研究がスタートすることとなり、今後の発展が期待される。これも顔をつきあわせて技術討議を重ねた結果であり、今回の派遣に際してご尽力下さった関係者の方々に心からお礼申し上げる。
 最後に後輩諸君へ: やはり行くに限る。行動あるのみ。言葉の壁は行けば何とかなる・・・のも一面真実だが、やはり事前準備をやればやるほど成果は大きい。私の場合は米国で修士を取ったときの苦労が活きた。「貿易・技術立国日本」の技術者・研究者は、英語の勉強にいくら時間をかけても決して後悔することはない。トライボロジストは、ECLに行くためだけにフランス語を勉強しても良いかもしれない。外国を見て、体験して、時には苦労もして・・・そういった経験がその後の人生を豊かにしてくれる。 さあ、次は君の番だ!