指導教員:木村 喜博 教授
研究課題:現代インドにおける社会流動ダイナミクス―国民統合の諸問題を中心に―
研修期間:2004年9月23日〜11月1日(40日間)
派遣先:インド工科大学ボンベイ校(Indian Institute of Technology −Bombay、以下IIT)
人文社会科学研究科経済学専攻(Department of Humanities & Sciences, Economics)
受け入れ教官:プシュパー・トリヴェディ教授(Professor Pushpa Trivedi)

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今回派遣されたIIT―ボンベイはインド有数の工科大学であり、2000年以降東北大とは大学間協定が締結されています。構内はポワイ(Powai)湖と500エーカーの熱帯雨林に囲まれ、1万人を数える学生と職員の殆どが大学構内の宿舎に居住し、ムンバイー市の喧騒とは別世界の一つのコロニーとなっています。宿泊に際しては、受け入れ教官のトリヴェディ教授の計らいで構内にある女子寮に滞在しましたが、多くの学生と交流し、時には意見交換が深夜に及ぶこともあり、無二の友人を得ることが出来ました。
今回初めてインドに滞在する機会を頂きましたが、雨季が終わったにも関わらず、湖に囲まれている環境から室内外問わず蚊と暑さとの闘いを常に強いられることとなりました。そのため体調を壊して高熱が1週間止まらないという失態を演じてしまいましたが、そんな私をトリヴェディ教授や寮の友人をはじめとする多くの人々が気遣い、付き添ってくれたことには感謝の言葉が見つからないほどです。
IIT以外にも同市にあるCenter of Studies for Society and Secularism、Tata Institute of Social Sciences に頻繁に通い、資料収集とともにムスリム研究者や若手研究者と意見交換を行いましたが、日本での研究では得がたい多くの情報を頂くことが出来ました。特に前者の研究所におられるA・A・エンジニーア(A.A.Engineer)氏は現地調査の計画に際して多大なご協力を頂き、前期課程時から研究対象としている同市近郊のビワンディー・ニザームプール(Bhiwandi-Nizampur)市を無事訪問することが出来ました。パワールーム工業で全インドでも名高いビワンディー市では3名の方から聞き取り調査とともに、織機工場の見学を行い、日本の紡績企業との技術提携がされていることも分かりました。
今回の派遣では、ムンバイー市にあふれるスラム地区が代表するように、マイノリティ・コミュニティや他州から求職のための大量の移住に伴う社会流動こそが、人々に格差を生じさせ、その結果として人々に不和を生じさせているのだと、自らの肌で改めて感じました。またIIT滞在中には、インドの人々がおおらかで温かいと感じる反面、未だに宗派間、ベジタリアン・ノンベジタリアン(ヒンドゥー教徒)間、リベラル派・伝統派間の心的対立関係が、学生にさえ残存していることを実感しました。今回派遣の機会を頂き、現地の研究者とのパイプや新たな研究視野が広がり、とにかく多くの素晴らしい経験を積むことが出来ました。
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