平成17、18年度国際インターンシップ体験記
東北大学大学院 環境科学専攻 新妻研究室 熊野 裕介
指導教員: 新妻 弘明 教授
研究課題: DD法による地熱流体ダイナミクス推定に関する研究
派遣期間: 平成18年3月17日〜6月12日
派遣機関: ロスアラモス国立研究所、ウィスコンシン大学
受入研究者:  Charlotte A. Rowe博士, Dr. Haijiang Zhang博士

   今回のインターンシップでは、約3ヶ月間アメリカに滞在させていただく事ができたが、その大半をロスアラモス国立研究所(以下、LANL)に滞在し、ウィスコンシン大学には約2週間程度滞在させていただく事ができた。研究テーマは地熱流体によって誘発される微小地震の観測データをDD法と呼ばれる震源標定法を用いて解析することによって地熱流体挙動の推定するというものであった。当初はLANLのRowe博士の下でインターンシップの研究をさせていただくつもりでいたが、同氏の紹介でウィスコンシン大学のZhang博士への訪問も今回のインターンシップに組み入れた次第である。

   LANLはメキシコ州の山間部にあり、原子力関連、国防関連の研究が行われており、一種の軍事施設としての側面を有している。私のインターンシップの研究は地球物理学、地震学に関する物であり、そういった側面とは直接的には関係が無い。しかし、同研究所では厳しいセキュリティチェック等のシステムがしかれており、常に警察の巡回があるなど、独特の雰囲気をかもしていることが印象的であった。その一方で、研究者の方々は皆それぞれに研究に取り組んでいらっしゃる様で、このギャップがとても興味深くもあった。受け入れ研究者のRowe博士は、いつでも親切に研究の相談に応じて下さり、また一方で私のやりたいように研究を進めさせて下さるので非常にやりやすかった。また、基本的には一人ひとりに部屋が割り当てられるので、集中して研究に取り組める環境があったこともありがたかった。  また自分と同じようにインターンシップで来ている学生や、ポスドクの人たちと交流できたことも良い経験であった。同研究所では積極的にインターンシップの学生を受け入れているようで、私が滞在していた当時も、同じ研究グループにイタリアからインターンシップで来ている学生と地元の大学から来ている学生がいた。イタリアから来ていた学生は前年の11月から同研究所に滞在しており、彼女には友人をたくさん紹介してもらったり、パーティーに招かれる等、本当にお世話になった。ヨーロッパからも割と多くの学生や研究者が来ている様で、そういった人たちで、ある種のコミュニティが形成される場合が多いらしい。またそのような場合、お祭り好きのイタリア人が中心になることが多々あるらしいのだが、彼女はその典型であったようだ。彼女のおかげで、いろいろな国から来ている学生と話をすることができた。一方、地元から来ていた学生は今回が2回目のインターンシップということで、勝手知ったるといった感じであった。彼は5月から同研究所に滞在していて、私の滞在の途中からオフィスの部屋をシェアしていたが、研究の話はもちろん、ちょっとした世間話をするなど、いつもリラックスさせてくれるので、慣れない土地で研究活動を行っている私にとって、非常に助かる存在だった。


   ウィスコンシン大学での滞在は最初に述べた通り2週間のみと短く、学生や研究者の方々と交流する機会はあまり得られなかったが、Zhang博士はDD法を用いたトモグラフィ(地下の弾性波伝搬速度構造の推定法)の開発者であり、今回のインターンシップを通じて有用なアドバイスを得ることができた。彼は元々中国の出身で、博士課程で同大学に移って来たそうである。博士課程を修了してまだ数年の若手の研究者で、年齢も私と割と近かったこともあり、アメリカに移住してきたときの苦労話などいろいろな話をすることができた。

   今回のインターンシップを通じて、受入研究者のRowe博士、Zhang博士、並びにインターンシップの学生の皆さんのおかげで、充実した研究活動はもちろん、それ以上にいろいろな人との交流を通して世界観を広げることができたように思う。また今回得られた「人との繋がり」を大切にしていきたいと思う。最後になるが、インターンシップを通じてお世話になった方々、並びに、今回のインターンシップの機会を与えて下さったCOEプロジェクト関係者の皆様に厚くお礼申し上げる次第である。
Zhang博士(右)と私
Rowe博士(右)と私
ロスアラモス国立研究所
(セキュリティーの都合上この辺りでしか写真の撮影は許可されていない)