平成18年度国際インターンシップ体験記
東北大学大学院 環境科学専攻 田路研究室 高橋 浩雄
指導教員: 田路 和幸 教授
研究課題: Novel Nanoarchitures and Nanoelectrodes for Micropower Litium-Ion Battery
派遣期間: 平成18年10月1日〜平成19年3月1日
派遣機関: 州立科学研究所、ケベック大学(http://www.inrs.uquebec.ca/)
受入研究者:  Mohamed Mohamedi 教授
 

 2007年の10月から5ヶ月の間、カナダ東部・ケベック州モントリオール郊外のケベック大学州立科学研究所(以下INRS)に滞在する機会を頂きました。受け入れ教官であるMohamedi教授は、かつて本学にも在籍した電気化学分野の研究者で、特にマイクロ・ナノスケールを想定した電気化学デバイス開発のスペシャリストです。今回の滞在では、カーボンナノチューブを利用したリチウムイオン二次電池用の新規負極材料の検討を行いました。

 ケベック州は、北米唯一のフランス語圏であり、文化的にもフランス圏の影響が強いそうです。これに加えて隣国であるアメリカの影響や、他のフランス語圏からの移民などで、一種独特の多文化性を持つ州に感じられました。実際にINRS内で出会った方々もフランス、アルジェリア、ベルギー、ベトナム、チリなど、これまで出会ったことの無いような国の方がおり、カナダ出身の方は半数も居ない様子でした。とはいえ、街中で出会うほとんどの人がある程度英語で会話でき、多文化を受け入れて暮らすケベックの人々に感じるものがありました。研究所はモントリオール市街からバスで20分ほど走った辺りにあり、周囲には他の研究所が幾つか見られるだけの開けた地域です。そのおかげか研究所内は広々としており、実験・調査ともに、とても伸び伸びと過ごせる場所でした。

 今回のインターンシップでは、Mohamedi教授のグループと、やはりINRSに在籍するAli教授らのグループが開発したカーボンナノチューブ材料について、リチウムイオン電池の負極材料への応用を探りました。この中で、扱ったうちの一つのCNTs材料が、既存のものに比べ5倍以上の比容量を示すことを発見しました。更に電気化学的な基礎的性質の調査なども行い、この材料の一定の可能性を示すことが出来たと考えています。今後は材料の一部を更に分析し、情報を交換しつつこの研究を進める予定です。このような研究成果はもちろんですが、個人的には実験の過程での各先生方とのディスカッションと、それにより得た電気化学的なものの見方、考え方などの方が有難く、また今後の為にも重要なこととなったと感じています。

 今回のインターンシップは、受け入れ教官のMohamedi教授やグループの学生、Ali教授らINRSの方々のおかげで、自分にとって非常に意義深い体験となりました。文化と言う意味でも、また研究面でも全く背景の異なった様々な人との関わり合いは楽しく、また自身のそれについて再考するためにも良い機会であったと感じています。今回のインターンシップを快く受け入れてくださいました。
Mohamedi教授、INRSの皆様に感謝しています。最後に、今回のインターンシップで大変お世話になりました本COEに関わる先生方、スタッフの皆様に、心から感謝いたします。


 

写真1:ケベック大学州立科学研究所(INRS)



写真2:モハメド教授と研究グループの学生