平成19年度国際インターンシップ体験記
東北大学大学院 工学研究科 ナノメカニクス専攻 徳山研究室 鳴海 孝之
指導教員: 徳山道夫 教授
研究課題: The Glass Transition in a Binary Mixture of Colloidal Particles
派遣期間: 平成19年4月1日〜6月28日
派遣機関: エモリー大学物理学科
受入研究者: Eric R. Weeks助教授

   平成19年4月1日よりおよそ3ヶ月間,ジョージア州アトランタにあるエモリー大学物理学科に滞在させていただきました.今回私を受け入れてくださったWeeks教授は,ガラスや過冷却液体といったナノスケールの物性において重要と考えられている動力学の空間不均一性を,共焦点顕微鏡を用いて世界で初めて実験により3次元的に捉えた人物であり,今も研究の第一線で活躍されております.私は空間不均一性について普段は理論的な立場から研究しているのですが,理解の幅を広げることを目標として今回の国際インターンシップでは実験的研究を行いました.

   研究室の方々は非常に好意的で,実験について様々なことを教わることができました.今までは論文で読むことだけで得ていた知識を,実際に実験をすることでより深く理解することができました.上で述べた共焦点顕微鏡を用いて実験を行っていたのですが,顕微鏡の特徴はなんといっても実際の運動の様子を見ることができるということであり,この経験は今後の理論的研究に必ず役に立つでしょう.幸いにして良いデータを取得することができたので,これらのデータの解析を通じて今後とも彼らと共同研究を行っていく予定です.また,実験技術といったことだけではなく,彼らと研究をすることでコミュニケーションをとることの重要性を改めて感じました.学生であろうがポスドクであろうが教授であろうが,お互いに納得いくまで議論を重ねるという姿勢は見習うべきものであり,この思いを忘れずに日本でもコミュニケーション能力の向上に努めます.

   エモリー大学の位置するアトランタはアメリカ南部の主要都市の一つであり,オリンピックが開催されたことで地名をご存知の方も多いと思います.また,コカコーラ社の本社があり,アトランタはコカコーラと共に成長したと言っても過言ではありません.エモリー大学もコカコーラ社から多額の寄付を受けており,大学内にはコカコーラ創業者の名前を冠した建物が多く存在します.福岡とほぼ同じ緯度に存在し,湿度が高く蒸し暑いということで日本と比較的似た気候であると言えます.5月中旬頃から日中の気温は30度を超えていました.

   国際インターンシップの3ヶ月間は最高の経験となりました.違う環境に身を置くことで今まで日本で行ってきた研究を客観的に見直すことにもつながりました.博士後期課程入学早々にこのような経験ができたことは,今後の研究へのモチベーションとなるに違いありません.最後になりましたが,国際インターンシップを援助していただいたCOEプログラムにこの場を借りて感謝の意を表したいと思います.
Weeks研究室の集合写真.最前列右側の男性が今回私を受け入れてくださったWeeks教授.