File.07混合物体の流れを解明する

流れについて考える場合は、まず気体のみ、液体のみといった単純な状態から取り組む。だが、現実の世界はもっと複雑だ。 天気のシミュレーションをしようとすると、大気だけでなく水滴なども一緒に考えなければならない。 水の流れだと、気泡や砂粒が混ざっているかもしれない。このように、液体と気体、固体、また違う種類の液体同士など、 2種類以上のものが混ざった状態の流れを混相流という。石本先生は、こういった、より現実に近い流れである混相流の研究に取り組んでいる。 その一つが半導体の洗浄問題だ。  半導体の洗浄には特殊な方法が必要だ。まず思いつくのは水で洗う方法だが、表面の凹凸がナノミクロンと細かすぎるので、 水の毛細管現象によって構造が壊れてしまう。そこで石本先生が新しく研究したのが、窒素の氷の粒をぶつける方法だ。 この場合だと半導体の細かい構造を壊さずにすみ、ぶつけた後の窒素は気体になるので手軽だ。実験とシミュレーションを行ったところ、 効率よく汚れを取れることが分かったという。  この方法は、あっという間にものを凍らせることもできる。そのため食品や生物の組織などを、 細胞を壊さずにうまく冷凍するのにも応用できるのではないかということだ。 。

●より詳細な津波被害をシミュレーション
 震災以降、津波のシミュレーションが盛んに行われているが、そこで予測されているのは、広い地域における浸水範囲と、 波の高さといった大まかな情報だけだ。石本先生はより具体的に、建物にがれきの混入した津波が当たる時に受ける力の大きさや、 流れてきた自動車などが当たった際の衝撃などをシミュレーションしている。水門や石油タンクなどが破壊されると、より被害が大きくなる。 衝撃を予測することができれば、前もって防護壁を作るなどの対策を立てられるようになるということだ。

自分の能力を生かせる場を見つけてほしい

 半導体の洗浄の研究は、半導体をテーマにしている流体科学研究所の寒川先生と共同で行った。 研究所には様々な分野の研究者がいるため、普段だと取り組むことがないような新しいテーマにも取り組むチャンスがある。 学生に対しては、社会の産業状況や市場規模を理解し、そのなかで自分の能力を生かせる分野を見つけてほしいということだ。

 写真はフランスのシャモニーというところに行ったときのものです。バックに見えるのは西ヨーロッパで最高峰のモンブランです。 ケーブルカーで登りましたが、空気が薄くて大変だったとか。自然だけでなくニューヨークのようなビルが並ぶ都会も好きだそうです。

石本 淳
Jun Ishimoto
東北大学 流体科学研究所 教授
 1986年山形大学入学、1990年に東北大学大学院に入学、1995年に博士号を取得したのち、東北大学流体科学研究所の助手に。 弘前大学理工学部 助教授、東北大学流体科学研究所 准教授を経て、2012年より教授。おもに高機能性混相流体の超並列融合計算研究に従事。 異分野融合型の産学連携研究を推進している。
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