File.20温めると冷やす、どちらが難しい?

 加熱といえば、普通は火や電子レンジを使う方法が考えられる。では加熱をピンポイントで行うにはどんな方法があるだろう。 熱した針やレーザーを使うといった方法を思いつくかもしれない。一方、「ものをピンポイントで冷やすのは、 加熱ほど簡単ではありません」と岡島先生は言う。例えば冷やした針を使っても、 冷やしたい相手が持つ温度によってすぐに温まってしまう。だが狭い領域を冷やせるようになれば、 例えば体の中のがん細胞だけを凍らせて死滅させるといったことに応用できる。凍らせるだけなので、 加熱のように余計な化学変化が起きることもない。
 岡島先生が写真で手に持っているのは、大学院生の時に開発した、 とても細い注射針程度のクライオプローブ(棒状の冷却機器)だ。 針のように見える部分の太さはたったの0.5mmで、内部は二重の管になっている。 外側の管の先は閉じられており、中をエアコンなどに使われる冷媒が循環して、 先端で-50℃の低温をつくり出す。冷たいのは先端だけなので、手元は素手でも安全だ。 従来のクライオプローブは液体窒素を使うが、大掛かりで断熱も必要だった。 「おそらく世界でいちばん細長い冷凍装置でしょう」と岡島先生は話す。 実験用の寒天に刺してみると、この細さにも関わらず目に見える速度で凍っていくという。
 この管の中では冷媒の沸騰が起こっている。現在、岡島先生はその現象を理論面から理解しようと、 細い管内の沸騰の数値計算に取り組んでいる。沸騰は身近な現象だが、 まだ誰もコンピュータで完璧にシミュレーションするのは成功していない難しいテーマだそうだ。

ドイツに留学していた際は、よく家族と一緒に動物園や水族館に行っていたそうです。 ハイデルベルクやシュツットガルトの動物園をはじめいろんな場所を訪れたとのこと。 動物園は基本的にのんびりとした雰囲気で、放し飼いの動物が多かったとか。 奈良の鹿みたいな感じでクジャクなどが歩いているそうです。

岡島 淳之介
Junnosuke Okajima
東北大学 流体科学研究所 准教授
2006年東北大学機械知能工学科卒業、2011年東北大学機械システムデザイン工学専攻において博士号取得。 2011年より東北大学流体科学研究所助教、2021年より准教授。 2015年5月から2016年3月までダルムシュタット工科大学(ドイツ)の客員研究員。
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