File.26生き物のような流れを宇宙でみる

水滴を指に乗せ、2本の指で挟んでその間隔を離していくと、水の円柱を作ることができる。水が指から落ちないのは、表面張力がはたらいているからだ。
円柱の大きさは地球上では最大でも5ミリメートルほど。だが重力のない宇宙では、2枚の板で挟むことによって直径60ミリメートル、高さ180ミリメートルもの円柱を作ることができる。
この板の一枚をもう一枚の板より高温にすると、円柱の表面側では高温から低温の方へ、中心側では逆の方へと動く対流が発生する。
これは表面張力の大きさが温度によって変化することが原因だ。この表面張力と温度差がつくりだす流れは「マランゴニ対流」とよばれる。
この対流は、ある不思議な特徴を持っている。2枚の板の温度差を大きくしていくと、どんどん対流の速度が上がり、ある時点で心臓が脈打つようにリズムを持ち始めるのだ。
「この振動現象が起こる理由を解明した人は誰もいません」と小宮先生は話す。
対流の観察では、微粒子を液体に混ぜ、その動きを追いかける。だが地上では小さな円柱しか作れず、また重力が流れに影響をおよぼすため、観察はとても難しい。
そこで小宮先生たちは専用の実験装置を開発し、微小重力の環境をもつ国際宇宙ステーションでマランゴニ対流の実験を行った。
この対流が脈打つ現象は、半導体素子の材料であるシリコンの結晶を作る際にも起こり、結晶の品質を低下させてしまう。
宇宙で行った実験の結果は長年の流体現象の謎を解くとともに、身近な製品の作り方をも変えるきっかけとなるかもしれない。

小宮先生はよくお子さんと一緒に模型作りなどを楽しんでいるとのこと。ロボットや飛行機、ラジコンなどさまざまなものを作ってきたそうです。 現在お子さんはペーパークラフトに夢中だとか。 また空気砲や壊れないシャボン玉といった科学実験もしているそうで、まさに理系パパといったところのようです。