File.36飛行機が生物のように進化する?

 旅客機を作る際に大切なのは、できるだけ少ない燃料で長い距離を安全に飛ぶことだ。そのために、「空気抵抗が少ない」「軽い」「頑丈」といった条件を満たすよう設計される。だが例えば頑丈であることを優先すると機体が重くなり、たくさんの燃料が必要になってしまう。「人間は一つだけの問題を解くことは得意ですが、複数の条件を満たさなければならない問題の答えを出すことは苦手です」と下山先生は話す。
 そこで先生が研究するのが、生物の進化を真似たプログラムによって、バランスのとれた機体をコンピュータに設計してもらおうというものだ。生物の進化では、環境に適応したものが生き残って次の世代を残す。これを飛行機の設計に応用する。まず様々な形状の飛行機の設計案を用意して、2つの設計案の一部分を交換し、「子」をつくる。その中から環境に適応するもの、つまり飛行機の場合は、空気抵抗が少ないなどの条件を満たす設計案を選び出す。これを何世代か繰り返すことで、バランスの取れた設計案を導き出すのだ。
 先生はこの手法を応用して、家庭における電力制御システムの開発にも取り組んだ。最新の電力制御システムは、発電所や太陽電池からの電力を、蓄電池なども活用しながら使い分ける。ここでも住む人が必要とする時に電力を供給しつつ、電気料金を抑える、二酸化炭素の発生量を抑えるといった複雑な条件を満たすことが求められる。このように先生の研究は、幅広い分野において人が今まで思いつかなかったようなアイデアを提案し、問題の解決に役立つ可能性があるのだ。

この写真は、北海道の旭山動物園で娘さん二人といっしょに撮影したものです。実は娘さんは以前、北海道は外国だと思っていたそう。そこで実際に行ってみようということになったそうです。出張が多くなかなか時間が取れませんが、このような家族との時間を大切にしたいということです。

下山 幸治
Koji Shimoyama
東北大学 流体科学研究所 准教授
2006年、東京大学大学院工学系研究科にて博士号を取得。同年、東北大学流体科学研究所の博士研究員、2009年に助教、2014年より准教授。2012~2013年および2014年に米スタンフォード大学、2013年に仏エコール・サントラル・リヨンにて在外研究。
  • ●最適化
  • ●ロバスト設計
  • ●進化計算
  • ●人工知能
  • ●航空機設計
  • ●エネルギーマネジメント