File.37次世代燃料の性質を明らかにする

 燃料の燃え方は多種多様だ。燃料によって着火温度や着火までの時間、どのような化学反応が起こっているかなどに違いがある。燃料の燃え方を調べるため、従来は密閉容器に燃料ガスを入れて急速に圧縮し、着火するまでの時間や温度などを調べていた。ただしこの方法では、着火までに時間の掛かる燃料について調べることは難しかった。一方、先生が取り組む方法は、直径2ミリメートル程度の細いガラス管を使う。ガラス管の一方の端を低温、もう一方を高温に保ち、低温の側からゆっくりと燃料ガスを流す。すると、ある温度になった場所で燃焼が始まる。この方法であれば、どんなに燃えにくい燃料でも必ずどこかの地点で燃焼させることが可能だ。
 一方、燃焼現象においては化学反応も非常に複雑になる。例えばメタンと酸素を混ぜて燃やすと水と二酸化炭素になるが、これは反応の始めと終わりの部分だけを取り出したにすぎない。実際は、この間に100種類以上もの化学反応が起こっているという。ただその詳細を調べようとしても、炎の厚さは通常では1ミリメートルにも満たない。このような小さな領域で、どのような成分が存在するかを調べるのは至難の業だ。だが先生の取り組む方法であれば、ガラス管の中で炎を10倍以上に引きのばして観察できる。
 現在、アンモニアやバイオ燃料など新たな燃料の研究が盛んに進められているが、それらは化石燃料と比べて着火しにくいものや、燃焼のメカニズムの分かっていないものが多い。先生の研究は、こういった燃料を実用化するうえで大いに役立つだろう。

先生は去年から東北大学の鳥人間コンテスト出場を目的とした学友会人力飛行部「Windnauts」の部長(顧問)になったそうです。先生はサークル初期のメンバーで、コンテスト初出場や設計担当など、とても充実した経験をしたとのこと。今のメンバーにも安全に配慮しつつ存分に楽しんでほしいとのことです。右の写真は広瀬小学校でコンテストや紙飛行機の話をした時のものです。

中村 寿
Hisashi Nakamura
東北大学 流体科学研究所 准教授
1997年、東北大学工学部に入学、2001年に卒業。2006年、東北大学大学院工学研究科にて博士号を取得。2007年に東北大学 流体科学研究所の助教、2015年より准教授。2011年9月より1年間、アイルランド国立大学ゴールウェイ校にて在外研究。
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