研究成果
ドラッグデリバリー技術として、透過物質選択機能を有した機能性膜の開発が強く期待されている。本研究では、タンパク質が生体膜を通過する際の形態であるチャネル輸送・キャリア輸送およびポンプ輸送、すなわち束縛拡散（hindered diffusion）に着目し、膜内の諸構造がタンパク質にとってどの程度の空間的抵抗となるかを評価し、そこから得られる知見を通して、透過物質選択機能を有した機能性膜生成の実現に資する物質移動量の評価を行った。位相シフト技術を採り入れた可視化用小型干渉計を製作し(図1)、膜界面近傍の高精度可視化を行った。また、界面近傍の物質拡散場を定量評価するために、モデル化された透過膜界面近傍の三次元濃度分布を数値解析により評価し、濃度場情報の積分値として得られる干渉計での可視化データを定量的に取り扱える範囲を決定した。実際の拡散場観察に使用する膜は、周囲環境によりマイクロスケールオーダーで代表チャネル幅を制御できる機能性を有した材料を用い、渡航先の材料工学研究者の知見をもとに熱工学的観点を踏まえて製作した(図2)。観察結果は図3に示されるように、バルク領域だけでなく界面近傍においても定量的に濃度場を可視化することができ、合わせて膜上下での縞パターンの違いから非対称の濃度場が形成され、膜の上下界面で異なる物質流束となっていることが明らかとなった。膜上面（希薄濃度側）の物質流束は、膜厚に依存している(図4)ことから、高濃度側からの膜内物質移動量が物質流束の律速条件となっていることが定量的に評価された。今後は、得られた知見をもとに透過物質選択機能を有した機能性膜の実現を目指す。
 図1 可視化用小型位相シフト干渉計 |
 図2 製作した膜のSEMイメージ（Poly lactic acid (PLA)） |
 図3 可視化されたタンパク質濃度場 |
 図4 膜の厚さによる物質流束の変化 |
学術論文
-
Atsuki Komiya, Jérôme Chevalier, Sébastien Provost and Sébastien Livi, Quantitative evaluation of mass flux of protein through the poly lactic acid (PLA) thin plate, J. Control. Release, to be submitted.
学会発表
- Atsuki Komiya, Sébastien Provost, Sébastien Livi and Jérôme Chevalier, Active Mass Transfer Control in Diffusion Field by Smart Materials, 2012 Annual ELyT Workshop, (2012), 60-61.
- Atsuki Komiya and Jérôme Chevalier, Experimental Trial to Active Control of Protein Mass Flux in Hindered Diffusion Field, The 23rd International Symposium on Transport Phenomena (ISTP-23), (2012), USB-268.
- Atsuki Komiya, Jérôme Chevalier, Sébastien Provost and Sébastien Livi, Evaluation of Protein Mass Flux in Hindered Diffusion Field, 2013 Annual ELyT Workshop, (2013), submitted.
- Atsuki Komiya, Jérôme Chevalier, Sébastien Provost and Sébastien Livi, Visualization of protein diffusion field in the vicinity of surface of thin plate, The 8th World Congress on Experimental Heat Transfer, Fluid Mechanics and Thermodynamics (ExHFT-8), to be submitted.
