実験計測と数値解析を統合したハイブリッド風洞 | |
流れ場の情報を得る方法には実験計測と数値解析がありますが,それぞれに長所と短所があり,実際の流れ場において正確な状態量を全領域で得ることは困難です.ハイブリッド風洞は,風洞実験による実験計測とコンピュータによる数値解析を一体化し,実際の流れの状態量を再現することを目的とした新しい解析手法です.制御理論のオブザーバの理論を流れの数値シミュレーションに応用したもので,実験計測と数値解析により得られた状態量の差から得られるフィードバック信号を数値解析モデルに加えることで,解を実際の流れに収束させます.本手法により,従来は得られなかった実際の流れ場を低い計算負荷で再現できることが示されており,リアルタイムに動作するオンラインの流れのモニタリングシステムを実現しています.
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![]() 図1 ハイブリッド風洞の構成 |
ハイブリッド風洞は,図1に示すように流路中に物体を設置した風洞,圧力センサ,ワークステーション,スーパーコンピュータで構成されます.実際の流れの状態量を得るために,物体の表面に設けられた圧力孔から圧力を計測し,スーパーコンピュータに転送します.計測値を用いて計算された解析結果は,ワークステーションに送られ,リアルタイムに流れ場が可視化されます. |
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左上: 実験,左下: ハイブリッド風洞, 右下: 通常のシミュレーション (画像クリックで動画再生) |
図2は,風洞内に設置された角柱後流の気流に発生するカルマン渦の流脈線による可視化例です.左上がオイルフォグを用いた実験結果,下段左がハイブリッド風洞,下段右が通常のシミュレーションによる解析結果です.通常シミュレーションで渦が再現できないのは,リアルタイム解析のために粗い計算格子を用いているためです.ハイブリッド風洞では,このような計算条件においても実際の流れと一致する流脈線が得られています. |
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Re数は0から2200まで変化 (画像クリックで動画再生) |
図3は,実験による流れの可視化と対応するハイブリッド風洞による解析結果の圧力場を重ねて表示しています.圧力場の可視化では,位相解析により圧力場の特徴が明瞭に現れるように,カラーテーブルが自動的に設定されます(藤代研究室との共同研究).従来は,流れ場内の圧力分布を得ることは困難でしたが,ハイブリッド風洞により実際の流れに対応する圧力場をリアルタイムに再現することが可能になりました. |
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参考文献 [1] Nisugi K., Hayase T. and Shirai A., A Fundamental Study of Hybrid Wind Tunnel Integrating Numerical Simulation and Experiment in Analysis of Flow Field, JSME International Journal Series B, Vol. 47, No. 3 (2004), 953-604. [2] Hayase T., Nisugi K. and Shirai A., Numerical realization for analysis of real flows by integrating computation and measurement, International Journal for Numerical Methods in Fluids, Vol. 47 (2005), 543-559.
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