研究成果Research Topics

代表的な研究成果例

  • 航空機の後退翼前縁部付近での遷移の様子

    航空機の後退翼前縁部付近での遷移の様子

    民間航空機が運航する際に、エネルギーの損失となる全抵抗のうちの約半分は空気の粘性による摩擦抵抗によるものです。航空機周りの流体は層流と乱流状態が混在し、乱流状態では摩擦抵抗が増大しますが、工夫により層流状態を主翼の上で50%維持できれば、全抵抗の10%を低減できることになります。数値計算技術の向上や表面の加工技術の発展により、従来より高度な性能を期待できることから、近年注目を集めています。旅客機の主翼では衝撃波の影響を軽減するため後退角がついていて、そのため流れが複雑になり、特有の層流-乱流の遷移現象が生じることが知られています。大規模並列化による直接数値計算を実施することで、後退翼面上の遷移機構の詳細を明らかにし、遷移予測技術の精度向上、新しい層流化技術の提案を目指しています。

  • 左心室内の血流解析

    左心室内の血流解析

    体循環に血液を送るポンプの働きをする左心室の内部では、その血流速度が速いことから、左心室内で血栓は形成されないと考えられてきましたが、近年の研究によって左心室においても血栓が形成される可能性があることがわかりました。
    本研究では、左心室内の代表的な内部構造物を考慮した左心室モデルを開発し、流体科学研究所のスーパーコンピュータを利用して、左心室内の流れについて研究をしています。図は内部構造がないモデル(左)とあるモデル(右)の左心室内の渦構造を可視化したものです。白い表面が渦の形状を表しています。この解析より、左心室の内部構造が存在することによって左心室の尖端に渦が届かなくなることが確認されました。また、渦の可視化以外にも様々なパラメータを調べることによって、内部構造の影響で血流が停滞する傾向が強くなることがわかりました。さらに、本研究の解析技術を利用して、弁膜症などの疾病による影響などについても研究を進めています。

  • 熱媒の熱伝導率を支配する分子動力学機構の解明と制御

    上副図はFluid Phase Equilibria, 441, p.24 (2017)よりElsevierの許可を得て再掲。

    熱媒の熱伝導率を支配する分子動力学機構の解明と制御

    電子デバイスをはじめとする最近の工業機器では、発熱管理と放熱など高度な熱マネジメントが要求されるようになりました。それに伴い、所望の特性を持つ熱媒体を分子レベルで設計する技術が求められています。そのような「熱媒の分子設計」を実現するためには、マクロな熱伝導の分子スケールメカニズムを知ることが必要ですが、固体結晶や気体と比べて、液体やソフトマターなど分子配列・運動が不規則な材料については、研究が遅れています。
    本研究では、分子動力学シミュレーションを用いて、マクロ熱伝導を一つ一つの原子・分子間の相互作用(熱伝搬パス、上副図)によるミクロなエネルギー伝搬の集積として把握する解析法を確立し、それによって、アルカン・アルコールなど典型的な液体について、分子の構造・官能基の特徴と熱伝導率の関係が明らかにしてきました。また、最近では様々な炭素材料(下副図)のナノ粒子を母材に分散させた複合材料が熱媒体として注目されており、こちらについても解析を進めています。
    (共同研究:トヨタ自動車株式会社)

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