•  近年、人口増加に伴う食料不足が深刻な問題となりつつある。しかしながら、陸上での耕地の拡大は、環境問題による制約のため、大きな期待を持つことはできない。一方海洋は、右図に示すような生物生産性の低い海域(外洋域)が多く存在し、海洋に存在する膨大な資源量を十分に活用できていないのが現状である。従って今後、海洋の有効利用の重要性が謡われていくことが予測される。  そこで当研究室では、栄養塩に富む海洋深層水を、人工的に表層域に汲み上げることで、表層域を肥沃化する海洋緑化計画(LAPUTA計画)を提案している.
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  •  LAPUTA計画では、Stommelらにより提案された「永久塩泉【下で説明する】」を利用して、海洋深層水の汲み上げを図っている。永久塩泉による汲み上げには、次のような利点がある。

    ・ 人工湧泉を行うための人為的エネルギーを必要としない。
    ・ 構造が単純なため、湧昇装置のメンテナンスは少なくてすむ。
    ・ 海表面上の構造物が少ないため、波浪による湧昇装置破損の危険性が少ない。
    ・ 汲み上げた海洋深層水の再沈降が起こりにくい。

     当研究室では、永久塩泉による海洋深層水汲み上げの実証・評価を目的として右図に示す実験装置を用いてマリアナ海溝付近で海洋実験を実施してきた。2002年には、研究船「白鳳丸(下図)」のKH02-2次航海に参加し、世界で初めて永久塩泉による上昇流測定に成功した。また2004年には、同船KH04-2次航海にて、永久塩泉による上昇流の連続測定に成功した。     
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  • 上層が高温・高塩分、下層が低温・低塩分の成層中に、鉛直にパイプを設置し、パイプ内を下層の低温・低塩分の海水で満たしたとする。すると、パイプ内の海水はパイプ外の海水により温められ、やがてパイプ外の海水と同じ温度になる。その結果、パイプ内外には、塩分差による密度差が発生し、パイプ内に浮力が発生することになる。この浮力により、パイプ内には上昇流が発生する.

    この現象は永久塩泉Perpetual Salt Fountainと呼ばれ、1956年にH.StommelらによりDeep-Sea Research誌に発表された。
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    白鴎丸[マリアナ海溝付近海域実験]
       KH-01実験 (KH-01-*)
       KH-02実験 (KH-02-*)
       KH-04実験 (KH-04-*)
       KH-05実験 (KH-05-2)
       KH-09実験 (KH-09-1,2
    女川実験
    閖上実験 (2009年3月3日)
    飛島実験 (2010年9月):悪天候のため実験中止
    志津川実験 (2010年11月12日)
    佐渡実験1 (2011年2月11日)
    佐渡実験2 (2011年8月1日)
    相模湾実験 (2011年12月4〜9日)
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  • 名称:沖ノ鳥島周辺海域における海洋深層水による漁場造成
            に関する研究
    時期:2007-2012.03
    目的:沖ノ鳥島周辺に設置してある浮き漁礁に永久塩泉の
        原理を利用して栄養塩の豊富な深層水を表層に汲み
        上げることで浮漁礁の効果を高めること
    提案:海流でパイプが流れるので流線型のパイプの利用
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