1. メタンハイドレートって?
  • メタンハイドレート(Methane Hydrate)とは、メタンを中心にして周囲を水分子が囲んだ形になっている包接水和物の一種である。低温かつ高圧の条件下で、水分子は立体の網状構造を作り、内部の隙間にメタン分子が入り込み氷状の結晶になっている。メタンハイドレートはよく「燃える氷」と呼ばれる。人工のメタンハイドレートは白く、触ると冷たい氷のような物質である(図参照)。メタンハイドレートは日本近海の海底に大量に存在しており、南海トラフなど日本近海の可採年数が日本の全エネルギー消費量の約96年分に相当すると言われている(図参照)。我が国における今後10年のエネルギー戦略としてメタンハイドレートの採掘技術の確立とその有効利用は重要な課題となると考えられる。
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    (NOAA Okeanos Explorer Program)

      

    (MH21 Research Consortium)

    2. 地球温暖化とCCS技術
  • 二酸化炭素をはじめとする地球温暖化ガス削減は、我が国の目標としてだけでなく世界規模での重要課題の一つである。しかし、GDPと二酸化炭素の排出量は依然として強い相関があり、経済発展と二酸化炭素排出量削減は未だに両立することが難しい。そのため、今後はCCS(Carbon Capture and Storage)技術の開発が望まれている。本研究室では従来の光学干渉計を改良利用し、視野1mm四方以下のマイクロ領域を高精度に可視化できるシステムを開発している。位相シフト技術を導入することで、非気液界面でのガスの吸収過程の高精度可視化に成功した。このシステムを使って、複雑系における二酸化炭素吸収過程を定量的に評価する研究を進めている。
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    (http://www.zmescience.com/)



    (Wikipedia)

    3. 研究の目標・ねらい
  • 本研究室では、メタンハイドレートを用いた二酸化炭素無排出発電に向けたシステム(図参照)を考案し、開発を進めている。その基礎学理となるメタンハイドレートのミクロ界面輸送現象解明およびマクロスケールへ展開した多孔質内界面輸送現象の解明、さらにそれをモデル化したメタンハイドレート層からの大規模メタン採集と発電システムの確立を目標としている。 日本国領海内に膨大な量が蓄積されていると推測されているメタンハイドレートを有効利用した発電システムを提案し、発電することによって生成される排熱と二酸化炭素を再利用することで、メタンハイドレート層内における分解を促進させ、メタンを高効率に生産する新しいシステムを実用化する。提案する本システムのキーテクノロジーとなるのがメタンハイドレート層内におけるミクロスケールにおける相界面での輸送現象に伴う不可逆現象であり、この現象を実験的および解析的なアプローチで詳細検討・評価していくとともに、マクロスケールへの展開を図り、二酸化炭素無排出発電システムの構築をおこなう。 人類の社会活動レベルを維持しつつも、早急に解決しなければならない地球温暖化や資源枯渇問題を克服すべく学際的研究の展開を行い、相界面科学が担うべきグリーン・イノベーションの目標実現に向けて戦略的に研究を推進する。
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    4. 多孔質内MHの固気液4相界面における熱・物質輸送
  • 実用上、岩石内に閉じ込められたメタンハイドレートの分解反応速度論を議論するためには多孔質体内における分解反応を考える必要がある。メタンハイドレート(固相)、メタン(気相)、水(液相)、そして岩体を構成する多孔質体(固相)という4相界面を含む系における熱・物質輸送特性について検討を行う。熱輸送特性の解明のため、高圧化における熱伝導率測定を行った(図参照)。
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    5. メタンハイドレード岩石製造とその分解反応
  • 中型および大型のMH岩石の生成とその機械的特性、そしてその分解実験によりCO2無排出発電システムの核となるメタン供給と二酸化炭素固定の知見を得ることを目的としている。
    海底における温水によるMH分解と炭酸温排水との関係を計測する。特に熱流動特性と破壊・亀裂などの機械的特性の関連について検討する。
    大型MH岩石を生成し、その中に高圧炭酸温水注入パイプとメタン回収パイプを設置した模擬実験装置を作成する。この装置により、実際の海底で起こる現象を正確に予測し、CO2無排出発電システムの実現に繋げる。
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    6. MHの生成・分解反応とミクロ界面輸送
  • これまでに当研究グループでは、既存の高圧可視化セル内(図参照)でのメタンハイドレートの生成および分解反応を高精度Mach-Zehnder型干渉計によりその場観察した。図はメタンハイドレートがメタン−水系の気液界面に生成したときの干渉縞である。この画像から液相内に生じるメタンの濃度場や反応界面の移動を捉えることができた。
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    7. 受託研究
  • CREST戦略的創造研究推進事業
    研究領域「エネルギー高効率利用のための相界面科学」
    研究課題名「海洋メタンハイドレート層のマルチスケール界面輸送現象の解明と大規模メタン生成への展開」
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