メンバーリスト:
JAXA航空プログラムグループ超音速機チーム 吉田憲司、牧野好和、中右介
東北大学流体科学研究所 大林茂 山下博

内容説明:
超音速旅客機の設計では地上ソニックブーム騒音の予測が重要である。本研究では気象条件や地理的条件を考慮した、実環境下におけるソニックブーム推算手法の構築を目指している。本研究は、JAXA航空プログラムグループ超音速機チームと共同で進めており、開発される新たな手法が環境にやさしい超音速機実現に役立つと期待される。

主要な結果の図とその説明:
図1は超音速機から発生するソニックブーム伝播の様子を示す。本手法は幾何音響理論に基づき開発されており、任意の飛行条件を設定できる(マッハ数、飛行高度など)。また緯度・経度や各地の地上高度も考慮できる。大気条件としては大気勾配の影響、大気境界層内の大気乱流効果、および分子緩和効果に着目して開発している。

図2は大気勾配によるソニックブーム騒音のグローバルな変動を予測した結果である。大気勾配条件は高層気象観測データを利用している。飛行マッハ数は1.7、飛行高度は約18kmとし、各地の地上高度を考慮して推算した。結果からソニックブーム騒音の地理的変動や季節変動を明らかにした。

図1 超音速機から発生するソニック
ブーム騒音伝播の様子

図2 大気勾配による地上ソニックブームの
グーローバルな変動予測

将来の展望(夢):
本推算手法は、東北大学が進める超音速複葉機やJAXA静粛超音速機の先進設計技術の1つとして活用されると期待できる。また本手法を発展させることで、環境負荷が小さい最適飛行ルートの探索などへの応用が期待できる。