動脈にできた異常な膨らみ (こぶ)を動脈瘤と呼びます. 脳内にできた動脈瘤(脳動脈瘤)が主な原因となる脳卒中は,日本における死因の第3位,寝たきり原因第1位の疾患です. 詳しく見ると,医療技術の進歩や人間ドッグの普及により脳動脈瘤の死亡原因としての割合は減少傾向にありますが, その一方で,寝たきり患者の増加による医療費の拡大など 新たな問題が生じています.
これまで脳動脈瘤の治療 は,開頭を行い,瘤の付根をクリップではさみ,瘤内の血流をストップさせるというものが一般的でした. しかし,血管内治療法が登場し,脳動脈瘤の治療は新たな局面を迎えています.血管内治療は, 全ての動脈瘤に対して適用できる治療法ではありませんが,開頭の必要がないため, 患者さんに対して負担の少ない治 療方法として注目されています.
血管内治療法には,瘤内にコイルを詰める方法と,瘤の入口にステントを置く方法があります. これらの治療法では,足の付根の動脈から脳動脈瘤部分までカテーテルと呼ばれる手術用チューブを通し, コイルやステントの通り道を作る必要があります.血管にカテーテルを通す技術は非常に高度で, さらに術式だけではなくカテーテルが血管壁に触れたときの感触など感覚的(経験的)な知識が求められます. そのため,血管モデルを用いて手術シミュレーション・トレーニングを繰り返す必要性があります.
ステントを用いた治療法では,どのようなステントが最も適しているのかということがまだ明らかになっていません.
そのため,ステントの効果を立証するためには,血流を効率よく減少させるステントデザインや瘤に対するステント位置を定量的に解析しなければなりません.
ステントとは
コイルやステントを用いて行う脳動脈瘤治療の目的は,どちらも瘤内に流れ込む血流を遮断し,瘤内の血流速度を小さくすることです.
治療前後において血流の変化を知ることは非常に重要にもかかわらず,残念ながら血流の変化の度合いを示す指標は未だに確立されていません.
PIVについて
これらの血管内治療,特に動脈瘤治療に関わる問題について研究し,新たな治療方法の提案を行っています.