ifslogo 極低温流研究分野
大平研究室
Cryogenic Flow Laboratory


研究内容

超流動ヘリウムに関する実験的研究

超流動ヘリウム中の熱流動現象の解明

超流動ヘリウムとは?

He相図図1.Heの相図
ヘリウム(He)は,原子の中で最も液化温度が低く(4.2 K,1908年に初めて液化に成功),極低温機器の良好な冷媒として用いられてきています。ヘリウムは,図1の相図に示すように
  • 常流動ヘリウム(He I) : 温度 2.17 K
  • 超流動ヘリウム(He II): 温度 2.17 K
の2つの液相を持ち,λ線により区切られています。He Iは,通常の粘性液体の性質を示しますが,一方のHe IIでは,通常流体では見られない様々な現象が観測されます。

He II中の熱輸送機構

He IIの物理現象は「二流体モデル」という概念により説明されます。このモデルは,He IIが常流動成分と超流動成分の2種類の成分からなると考えられます。

He表
表1.二流体モデルの説明
表1に示すように,常流動成分のみが粘性をもち,さらにエントロピの輸送もこの成分のみが担います。超流動成分は粘性を持たない成分であり,He II中ではこれら二つの成分が相対的に運動をすることにより(熱対向流:図2),熱が輸送されます。

このような熱伝達機構を持つことにより,He II中では,「超熱伝導性」や「熱機械効果」等の特異な現象が発生します。

He模式図

図2.熱対向流模式図

He II冷却のより効率的な応用を目指して−最適な冷却条件及び熱流動現象の把握−
He IIは,その良好な熱伝達特性から,人工衛星搭載用の赤外線天文観測衛星の冷却や,加速器・核融合炉に用いられる大型のNbTi系の超伝導電磁石の冷却に用いられてきています。しかし,He IIの伝熱機構に伴う熱流動現象は未だに詳細な解明には至っていません。

超伝導電磁石のクエンチ時のような大きな熱負荷が急激にHe II中に加えられた場合での,熱伝達特性の把握のみならず,He II中での熱流動状態の知見を得ておくことも重要と言えます。

本研究テーマでは,He II中に熱が加わり高密度量子化渦の発生から超流動崩壊を起こし,さらには膜沸騰まで至る機構を把握し,より効率的かつ安全な冷却状態の実現を目指しています。

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