研究内容
超流動ヘリウムに関する実験的研究
超流動ヘリウム中の熱流動現象の解明
超流動ヘリウムとは?
図1.Heの相図
ヘリウム(He)は,原子の中で最も液化温度が低く(4.2 K,1908年に初めて液化に成功),極低温機器の良好な冷媒として用いられてきています。ヘリウムは,図1の相図に示すように
- 常流動ヘリウム(He I) : 温度 > 2.17 K
- 超流動ヘリウム(He II): 温度 < 2.17 K
の2つの液相を持ち,λ線により区切られています。He Iは,通常の粘性液体の性質を示しますが,一方のHe IIでは,通常流体では見られない様々な現象が観測されます。

He II中の熱輸送機構
He IIの物理現象は「二流体モデル」という概念により説明されます。このモデルは,He IIが常流動成分と超流動成分の2種類の成分からなると考えられます。

表1.二流体モデルの説明
表1に示すように,常流動成分のみが粘性をもち,さらにエントロピの輸送もこの成分のみが担います。超流動成分は粘性を持たない成分であり,He II中ではこれら二つの成分が相対的に運動をすることにより(熱対向流:図2),熱が輸送されます。
このような熱伝達機構を持つことにより,He II中では,「超熱伝導性」や「熱機械効果」等の特異な現象が発生します。

表1.二流体モデルの説明
図2.熱対向流模式図