環境適合性を考慮した自動車エンジン排気マニホールドの形状最適化
概要及び自動車エンジン性能の推算方法
1997年に採択された京都議定書に寄れば,日本は2008年から2012年の間に1990年比で6%の温室効果ガスの排出削減が求められている.その一方で,自家用車の台数や走行量は増加の一途をたどっており,商用車の台数がほぼ横ばいであることを考えると,有害物質削減目標に対して自家用車向けのエンジンへの取り組みが不可欠である.その一方で,ユーザー側の要求である乗用車の高出力,低コスト化もやはり重要な設計要求である.
これらの設計要求に対して直接的に影響を与える部品のひとつに,エンジン燃焼室と有害物質を処理する触媒とをつなぐ排気マニホールドが挙げられる.これは複数の燃焼室からの排気をひとつにまとめる分岐管で,内部の流れは複雑となり,その形状によりエンジンの性能が大きく左右される.本研究ではまず,この部品の三次元性を考慮しながら,吸気から排気の過程をシミュレートし,エンジンの性能を評価することが出来る計算手法を確立した.この計算手法により,エンジン出力に影響を与える燃焼室への新気充填効率と触媒での有害物質除去能力に影響を与える触媒入り口での排気温度(高いほど触媒反応が促進される)を知ることが出来る.
領域分割型遺伝的アルゴリズムを用いた自動最適設計システム
本研究における最適化問題は,非線形性が強く,熟練した技術者によっても設計指針の把握は困難である.そこで,最適化アルゴリズムに非線形問題に効果的なMOGAを適用し,そのアルゴリズムそのものの改良も試みている.遺伝的アルゴリズム(GA)は遺伝子情報の子孫への伝達による生物の進化の過程に着想を得,最適化アルゴリズムに応用したものである.GAではあらかじめ複数の解候補を生成し,それらの全体を進化させながら最適化が進められるため,局所解への収束を回避することが出来,大域解の探索能力を持つ.また,複数の解集団を比較・検討し,設計指針の把握に役立つ情報を引き出すことも期待できる.
本研究ではこれらの手法を用いて,設計システムの完全自動化を目指している.これにより,自動車メーカーは開発コストの大幅な低減を期待することが出来,近年やや低調な日本のメーカーにおいて競争力を高めることができると考えている.
論 文
自動車エンジン排気系形状の多目的最適化
Exhaust Manifold Design with Tapered Pipes Using Divided Range MOGA
Copyright, Integrated Fluid Infomatics, Shiegru Obayashi and Masahiro Kanazaki.
Cooperated by MAZDA.
Email: kanazaki@mail.cc.tohoku.ac.jp