Research
四面体格子によるCFD自動解析法の研究
Containment dual control volumeを用いた非構造格子による並列数値解析法
領域分割型遺伝的アルゴリズムを用いた自動車エンジン排気マニホールドの形状最適化
Containment dual control volumeを用いた非構造格子による並列数値解析法
非構造格子法はその格子形状の任意性から、実機形状そのままに数値シミュレーションが可能である。Navier-Stokes計算では境界層での計算精度向上のため壁面に垂直方向には細かな、また格子点数の増加を抑えるため物理量変化の少ない壁に沿った方向には非常に引き延ばしたセルを用いるため、境界層付近はストレッチした要素で構成せざるを得ない。そのようなストレッチした要素における計算精度と安定性に関して、いまだ充分な改善策が講じられておらず、境界層にはプリズム層を用いるハイブリッド格子法により計算精度を確保しているのが現状である。
アスペクト比の大きな四面体格子においても比較的精度良く計算するために、H.Luoらは検査体積をContainment dual control volumeと称して各要素の外心を結んだ領域として定義し、この検査体積を用いることで計算精度の悪化を防ぐことができると報告している。この検査体積を用いることでストレッチした要素に対しても構造格子と同じような検査体積を構成でき計算精度や収束性を改善できる。
そこで高アスペクト比四面体格子上でも高精度に高レイノルズ数流れを計算するため、並列非構造ソルバー(PUG)の検査体積をMedian dual control volumeからContainment dual control volumeに変更し、その計算精度および収束性への影響について考察する
検査体積をContainment dual control volumeを採用したPUGでの計算結果を以下に示す。全領域四面体格子(all tetrahedral grid)に対して検査体積をMedian dualで定義して計算すると捕らえることができなかったONERA-M6翼面上での衝撃波が、Containment dualで定義することでハイブリッド格子を用いた計算結果同様きちんと捕らえられている。またその結果空力係数もHybrid格子を用いた計算に非常に近い値を求めることができている。
Containment dual
Median dual
Median dual
+ all tetra grid
+ hybrid grid
+ all tetra grid
ONERA M6翼面上の圧力分布
領域分割型遺伝的アルゴリズムを用いた自動車エンジン排気マニホールドの形状最適化
参考:D3 金崎雅博 http://www.ifs.tohoku.ac.jp/edge/kana/index.html
自動車メーカーにとって、ユーザー側の要求である乗用車の高出力、低コスト化に加え、現在では環境への負荷低減も重要な設計要求である。
これらの設計要求に対して直接的に影響を与える部品のひとつに,エンジン燃焼室と有害物質を処理する触媒とをつなぐ排気マニホールドが挙げられる。これは複数の燃焼室からの排気をひとつにまとめる分岐管で,内部の流れは複雑となり,その形状によりエンジンの性能が大きく左右される.本研究ではまず,この部品の三次元性を考慮しながら,吸気から排気の過程をシミュレートし,エンジンの性能を評価することが出来る計算手法を確立した.この計算手法により,エンジン出力に影響を与える燃焼室への新気充填効率と触媒での有害物質除去能力に影響を与える触媒入り口での排気温度(高いほど触媒反応が促進される)を知ることが出来る.
本研究における最適化問題は,非線形性が強く,熟練した技術者によっても設計指針の把握は困難である。そこで,最適化アルゴリズムに非線形問題に効果的なMOGAを適用し,そのアルゴリズムそのものの改良も試みている。遺伝的アルゴリズム(GA)は遺伝子情報の子孫への伝達による生物の進化の過程に着想を得,最適化アルゴリズムに応用したものである.GAではあらかじめ複数の解候補を生成し,それらの全体を進化させながら最適化が進められるため,局所解への収束を回避することが出来,大域解の探索能力を持つ。また,複数の解集団を比較・検討し,設計指針の把握に役立つ情報を引き出すことも期待できる。
本研究ではこれらの手法を用いて,設計システムの完全自動化を目指している。
これまでのところ内部流は断熱壁・非粘性で計算しているが、現在はより現実的な計算をするため等温壁・粘性の条件に変更して計算するよう改良を行っている。また排気管の形状に関してもこれまでは円形のみで設計を行っていたが、現在排気流入口付近での管形状を楕円のケース(下図)でも設計できるよう改良しさらなる解析を進める予定である。
排気流入口を楕円形とした排気マニホールド