
1. 研究背景
近年、超小型飛行体、通称MAV(Micro Air Vehicles)の研究が盛んに行われ始めた.
MAVの用途としてはそのサイズと飛行性能から、人の入り込むことの出来ない狭い領域の三次元的な探索などが考えられる. 現在、固定翼と羽ばたき翼双方について研究が行われているが、自然界からもわかるように、小型になると羽ばたきの方がより高い性能を期待できるとして、MAVでは主に羽ばたき翼の研究が多くなされている. しかしながら、この分野の研究は始まったばかりで、その飛行性能を高める為の有効な研究はあまり行われていないのが現状である.
2. 目的
本研究では、羽ばたき翼の飛行性能の鍵である翼型の最適設計を行うことを最終目的とし、現在まで二段階に分けて研究を進めてきた. まず第一に、翼周りの流れを解析するナビエ・ストークス(NS)コード1)の妥当性を実験結果と比較することにより評価した2) 3) . (NSコードの評価)、第二に最適化の手法として遺伝的アルゴリズム(GA)を用いることを考え、他の手法と比較することによりその妥当性を検討した4) 5)(最適化手法の評価). 以下それぞれの段階で得られた成果とその特徴について述べる.
3. NSコードの評価
3.1 研究内容
NSコードの評価では、翼に以下の式で表される上下振動とピッチング振動の連成からなる動きをさせ、その翼周りの流れについて計算と実験の結果を比較した.
上下振動 : h=h0sinkt00
ピッチング振動 : a = a0 sin(kt +φ)
φ:上下振動とピッチング振動の成す位相差
計算、実験共にレイノルズ数104で行い、計算はBaldwin&Lomax 乱流モデルを使用したものと、使用していないもの2つのケースについて行った. 翼型はNACA0012を用い、翼の平均迎角は0度(つまり時間平均揚力は発生しない)で、推進効率のみを見ることとした.
3.2 成果
図1,2より乱流モデルを使用した計算結果と実験結果の流れのパターンが非常によく似ていた. このことからBaldwin&Lomax 乱流モデルを用いた計算コードの妥当性を評価することが出来た.
また、上下振動とピッチング振動の位相差が30度と90度の時では翼の周りの流れの様子は大きく異なり、30度の時は翼回りに大規模剥離を生じているが、90度の時は大きな剥離は見られない. この時、計算により得られる推進効率を見ると位相差90度で高い推進効率を得ている. これより、翼周りの剥離渦の形成と推進効率との間には大きな意味があると考えられる.
3.3 研究の特徴
数値計算のみという論文が多い中、本研究では実験を行い数値計算の妥当性を評価している. また本研究では数値計算の結果により、翼面に生じる大規模な剥離渦が推進効率に大きな影響を及ぼすことがわかった. 従って、羽ばたきの研究を行うにあたり、翼周りの流れの評価を行う際、剥離渦の影響を考慮できるNSコードを用いることが必要不可欠であると考えられ、またそのコードの妥当性を証明できたこをは大変大きな成果だと考えることが出来る.くなされている。しかしながら、この分野の研究は始まったばかりで、その飛行性能を高める為の有効な研究はあまり行われていないのが現状である。
現在までの研究とその成果