4. 最適化手法の評価
4.1 研究内容
最適化手法の評価を行う為、フラッタ発電の最適設計を行った. フラッタ発電とは航空機の翼やつり橋なとに見られる破壊的な自励振動を逆にエネルギーとして取り出そうとするものである. このフラッタ発電と羽ばたきの仕組みは簡単には逆の関係になっており、フラッタ発電が風力を取り出すのに対し、羽ばたきは逆に、流体にエネルギーを与えるというものである.
フラッタ発電の最適設計では計算負荷を軽くする為、翼周りの流れの解析にはポテンシャル理論を用いている. 粘性の効果についてはナビエ・ストークスで計算した際の大規模剥離渦の効果を十分活用出来るように、設計の際、経験則による拘束条件を課している. これにより、計算負荷の軽いポテンシャル計算でも粘性の効果を十分考慮した結果を得ることが出来る.
目的関数は発電効率とし、最大化することを目的とした. 設計変数はシステムを支配する6つの無次元パラメータとした. 最適化の手法は、遺伝的アルゴリズムの中でもさらに局所解に陥りにくいと言われている適応的局所探索(ANS)6)を用いた. この手法は高次元の多峰性に加えて騙し構造をもつ複雑な適応度景観をもつ問題に適用するために開発された手法である.
本研究ではまず、多峰性のテスト関数を用いて手法の挙動確認、及びその有効性を調べ、次にこの手法を用いてフラッタ発電の最適設計を行った. 得られた結果はcomplex法を用いた結果と比較した.
4.2 成果
テスト関数にはValley関数とHimmelblau関数を用いた. Valley関数は最適解と準最適解をもつテスト関数であるが、ANSはそのいずれも捕らえることに成功した. またHimmelblau関数は最適解を4つ持つ関数であるが、これにおいては一度の探索で4つの最適解を捕らえることに成功した. フラッタ発電でもANSは優れた結果を出し、complex法との比較においても優れた結果となった. またこの手法を用いることによりcomplex法では見つけられなかった複数の解を見つけ出すことに成功した.
4.3 研究の特徴
羽ばたき翼型の最適設計を行う際、膨大な計算時間が想定される. そこで、いかにして計算時間を短縮し、良い解を得るかという点が問題となる. GAは多点探索である為、計算回数が多くなるのは否めないが、ANSでは無駄な谷の探索を行わない為、従来のGAに比べて精度が高く、計算回数の短縮をすることも可能である. また、特筆すべきは最良解を複数見つけ出すことが出来る点である. これにより、フラッタ発電では設計の幅を広げることが出来た. この点は羽ばたき翼型の最適設計においても十分良い成果を出すことが期待できる.
5. 現状と今後の予定
羽ばたき翼型の最適設計を行う為の準備として、CFDコードの妥当性の証明、最適化手法の有効性の証明を行うことが出来た. 今後は最適化手法のANSを多目的に拡張し、計算時間短縮のための計算の並列化を行う. 以上を持って、二次元羽ばたき翼の翼型最適設計を行う予定.


