研究クラスター

研究クラスターのミッション

流体科学研究所は、2015年に策定したVISION2030のもと、これまで蓄積してきた研究や技術、国際研究ネットワークを礎として、様々な社会課題の解決に向けて世界の研究者が集う流体科学分野の世界拠点形成を目指し活動してきました。
2021年9月、近年の社会情勢の急激な変化を踏まえ、研究所が目指す方向を今一度見つめ直し、VISION2030を改定しました。新たなビジョンにおいて、社会・産業界への貢献を組織的に行うために、研究所独自の分野横断型研究グループ「環境・エネルギー」、「ナノ・マイクロ」、「健康・福祉・医療(ライフサイエンス)」、「宇宙航空」の4研究クラスターおよび緊急性の高い社会課題に取り組むための研究チーム「社会課題解決タスクフォース」を組織しています。
今後、これらクラスター等の活動を通して、快適で豊かな社会構築に貢献する新しい学術基盤「統合流動科学」を創成、展開してまいります。

環境・エネルギークラスター

脱炭素社会を実現し、新たなエネルギー体系を創造する統合流動科学の開拓を目指します

COP26「グラスゴー気候合意」によって全世界が地球温暖化対策に具体的数値目標をもって取り組むことが再確認され、温室効果ガス排出抑制や新たなエネルギー源の創出が緊急の課題となっています。産業活動や生活の質を維持・向上させながらこれらの喫緊課題を解決していくためには、新たな低環境負荷エネルギー源の確保、自給可能な再生可能エネルギー導入促進、省エネルギー技術の更なる開発など、グリーン成長戦略を意識し入口から出口までの各々の知の創出を紡いだ取組みが不可欠となっています。環境・エネルギークラスターでは、人類の活動や持続的発展に必要不可欠な「エネルギー」の変換や創成について再考し、基盤技術から応用技術まで、広範な時空間における環境・エネルギー問題の解決に向けた幅広い研究開発を推進します。

ナノ・マイクロクラスター

ナノ・マイクロスケールで発現する現象を解明し、あらゆる分野の技術開発への応用を目的とした統合流動科学の構築を目指します

近年の科学技術の発達により、ナノ・マイクロスケールの構造を有する機器の設計・製作が可能になり、またその加工技術の高精度化、微細化が進むにつれ、これらのスケールで発現する機能を応用した新しいタイプのデバイスの構築があらゆる分野で盛んに行われています。ナノ・マイクロクラスターではこのようなナノ・マイクロスケールの現象をスーパーコンピュータや大規模実験設備を用いた解析技術により解析し、流動科学の視点から包括的に理解する学術分野の構築を目的として研究を推進します。またこれらの現象を利用した革新的デバイスや加工技術を開発し、様々な産業分野における機器の多機能化・高性能化にも取り組みます。

健康・福祉・医療クラスター

統合流動科学により、ヒトの健康を守り快適に暮らすことができる社会を実現します

少子・高齢化社会が急速に進み、社会環境が大きく変化しています。将来に渡って健康で安心かつ豊かな暮らしを実現するために、高度な健康・福祉・医療技術の創出が期待されています。本クラスターでは、これらを実現するために、生体内の輸送現象や生体と物理刺激の相互作用現象を解き明かし、統合流動科学の新しい学理の構築を目指します。具体的には、ヒトに関わる診断・予測・計測・モデル化手法の創成、生活環境と健康に関するデータ駆動型予測と保全、ヒトの機能の回復や付加、生体模擬環境の開発による脳卒中や心臓疾患治療への応用、感染症やガンなどに関わる予防・治療や診断・予測、プラズマ医療、再生医療を促進するタンパク質や細胞の処理技術の開発などの研究に取り組みます。

宇宙航空クラスター

統合流動科学により、宇宙機・航空機に関連する流れ場における現象を解明し、宇宙航空分野の発展に寄与することを目指します

次世代の革新的な宇宙機・航空機の開発には、高温・高圧や極低温、希薄大気などの極限環境の流れ、相変化を伴う混相流やプラズマ・燃焼などの化学反応を伴う流れ、ナノ・マイクロ・マクロスケールの時空間における流れなど、多種多様な流れ場の理解が必要とされます。またカーボンニュートラルな国際社会を目指す上で必要なグリーン成長戦略からは高効率な機体およびエンジンの開発を行う必要があり、宇宙機・航空機に関わる流れ場を高精度に制御しなければなりません。宇宙航空クラスターでは、宇宙機・航空機周りやそれらのエンジンシステムに関連する流れ場における現象の解明とその制御のために、風洞やスーパーコンピュータなどを利用した流れ場解析、数理的・データ科学アプローチなどの統合流動科学の視点から包括的に理解する学術分野の構築を目的として研究を推進します。