File.34プラズマの流れを閉じ込めるには?

 太陽が大きなエネルギーを生み出すために欠かせないものがプラズマだ。太陽の内部はとても高温なため、 太陽の構成成分である水素は、水素原子核(水素イオン)と電子に分かれた、プラズマとよばれる形で存在する。 この原子核同士がぶつかると核融合反応が起こり、ヘリウムができるとともに膨大なエネルギーを発生させる。
 この反応を利用して発電を行おうという研究が、世界各国が協力して建設を進める核融合実験炉「ITER(イーター)」だ。 このなかで課題となっているのが、プラズマを長時間安定に閉じ込める方法である。太陽は自分の重力によってプラズマを閉じ込めているが、 地上では専用の容器が必要になる。そこで有望なのが、ドーナツ状の磁場に閉じ込めるという方法だ。 プラズマは電気をもっているため、磁場によって動きをコントロールできる。ただし高温で激しく動くプラズマを閉じ込めるのは簡単ではなく、 現在のところ核融合反応が点火するほどの温度や密度には達していない。
 「このドーナツ状の磁場にプラズマを閉じ込めた時、プラズマが勝手に形状に沿って安定に流れる現象が観察されています」と廣田先生は話す。 この仕組みが分かれば、より長い時間プラズマを閉じ込められる可能性がある。一方、プラズマの流れの安定性は、自然界で普遍的に見られるものだ。 例えば太陽フレアの発生には、チューブ形状の磁場が関係している。「流体を扱う分野では、昔から流れの安定性の研究が行われてきました。 これらの知見をプラズマの研究に取り入れることで、プラズマの安定性の基本物理を明らかにしたいですね」

先生の趣味はバトミントンで、高校生の時から取り組んでいたとのこと。最近また力を入れ始め、 今年は地域で開催された大会の団体戦に、大学宿舎のチームとして参加。見事準優勝に輝いたそうです。 来年は優勝を目指すべく、しっかりと戦略を練って挑戦する予定だそうです。

廣田 真
Makoto Hirota
東北大学 流体科学研究所 准教授
2001年に東京大学工学部卒業、2006年に同大学新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻にて博士号取得。 同年より九州大学数理学研究院にて博士研究員、2008年に日本原子力研究開発機構 核融合研究開発部門の研究員、 2013年より東北大学流体科学研究所の助教。2014年から約1年間、米テキサス大学オースティン校にて客員研究員。 2019年より東北大学流体科学研究所の准教授。
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