•  発熱密度が上昇し続けている電子機器の冷却,分析や反応に用いるマイクロ流体デバイスの局所温度制御,生体内微小領域の冷却治療など,小さな領域における冷却技術の重要性が高まっている.ジュール発熱を利用したヒーターやレーザーを用いることができる「加熱」とは異なり,「冷却」は低温流体やペルチェ効果などを利用する必要があり,小型化は容易ではない.
     例えば右図はCPUの発熱密度の遍歴を表している.発熱密度とは発熱量を表面積で割ったものであり,同等の発熱量でも小型であれば発熱密度が高くなる.2000年代前半にはCPUの発熱密度は原子炉相当の発熱密度となっている.その後,発熱密度は1MW/m2を超えない程度に推移しているが,今後さらに計算能力向上と小型化を進めると発熱密度は上昇する可能性がある.
     小型かつ高熱流束な冷却デバイスを実現する上では,(1)低温流体の生成,(2)微細流路の伝熱特性,(3)冷却システムとその効率が重要となる.これらの観点から革新的な冷却デバイス・冷却システムを構築するべく研究を進めている.

     これまで行ってきた研究を以下に紹介する.
    1. マイクロチャネル内相変化伝熱を利用した微小冷却器
    2. 微小二重管内における相変化流の熱流動特性

  • Fig. CPUの発熱量の変化

  • 皮膚のシミや初期乳ガンなどの微小な病変を最小の侵襲度で治療するための凍結手術用微小冷却器(極細クライオプローブ)を開発している。このクライオプローブは外径0.55mmで、通常の注射針と同じサイズである。二重管構造で、それぞれの管の長さ、径を選定することにより、断熱条件下で-50℃を達成した。また、生体組織を模擬した37℃の寒天の冷却実験より十分な凍結領域を得られることが確認された.

    詳細

  • Fig. 極細クライオプローブと注射針の比較

  • 微小冷却器の基礎研究として微小二重管内の相変化流の熱流動特性について研究している。作動流体として減圧した水を用いた可視化実験により、管内の気泡の挙動と内管の径により伝熱特性の変化が明らかになった.
  • Fig. 微細二重管内の相変化流動の様子

  • 一般に熱伝達率は低いが使用の容易な空冷デバイスについて、マイクロスケール化等による伝熱量増大を目指している。
    MEMSプロセスにより作製したマイクロチャネル(図:左)内の超音速流の密度場について、位相シフト光干渉計を用いた高精度可視化計測を行っている。また、数値解析結果との比較によって、測定が困難なマイクロチャネル内の超音速流の温度場の推定も可能となる。