Tohoku University Institute of Fluid Science ナノ流動研究部門 分子熱流動研究分野

Ohara Laboratory

Japanese

Research

界面輸送特性の研究 
―シリカ-水/IPA界面のダイナミクス―

固体/液体・気体/液体など異質の物質が接触する界面においては、特異な流体構造と熱・運動量・物質輸送特性が発現し、NEMSや多孔質体、微粒子懸濁液など微細系の総括的特性を支配しています。私たちは分子動力学解析によりそのメカニズムを明らかにすると共に、必要な界面特性を発現する分子及び微細構造を探索するための基礎研究を行っています。

固液界面における物質輸送は、固液間の吸着・脱離を支配して液体中の物質輸送において境界条件を与えるだけでなく、メソポーラス体や複合的な微小亀裂をもつ固体壁などナノ構造をもつ固液複合システムにおいて、物質輸送特性を決定する最重要因子です。

シリカ―水 シリカ―IPA

 

半導体デバイスの製造工程においては、ナノスケールの微細構造を持つ表面に対する洗浄や薬液塗布などのウェットプロセスが重要となっています。微細構造内部での物質輸送現象は、これら半導体プロセスの成否や質に大きく影響を与えます。我々は、代表的な半導体基盤であるシリカ表面での水およびアルコール置換による水抜き剤として用いられるイソプロピルアルコール(IPA)のダイナミクスを解明しています。

水の密度/自己拡散係数分布 IPAの密度/自己拡散係数分布

 

間隔5~10nmの2つの固体壁に挟まれた水またはIPAについて、固液界面近傍での構造と物質輸送特性を解明するため、それぞれの液体の質量密度と自己拡散係数を測定しました。上図より、固液界面近傍において水およびIPAに密度ピークが見られることから、それら液体が界面付近で吸着層を形成していることがわかります。
また、水とIPA共に界面近傍では拡散係数が著しく減少し、界面から十分離れた位置ではバルクの値に近づくことがわかります。
さらに、水の場合は系中央付近でバルク値とほぼ一致しているのに対し、IPAはバルク値よりも依然として低くなっています。このことから、IPAの方が水よりもシリカ固体壁による閉じ込め効果を受けやすいと考えることができます。

私たちの研究によりナノスケールでの物質輸送現象を解明することで、より精度の高い半導体製造技術の実現に役立つことを目的として、産学連携研究を実施しています。

論文

  • Yoichi Naruke, Shuichi Kosaka, Takeo Nakano, Gota Kikugawa, Taku Ohara
    A molecular dynamics study on mass transport characteristics in the vicinity of SiO2-water/IPA interfaces
    International Journal of Heat and Mass Transfer, Vol. 84 (2015),pp.584-591.