5.ブラウン動力学法による二成分コロイド分散系のの計算機実験
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A. 研究目標 B. 研究成果

A. 研究目標

 有史以来、ガラスは様々な分野において利用され、我々の生活に欠かせない物となっている。 今日では情報通信分野、ディスプレイやデバイスの基板等、先端技術を支える素材としてより高機能なガラスの開発が進められている。 しかし、ガラスに関しては未だ解明されていない事柄も存在する。 その一つがガラス形成物質が過冷却状態を経てガラスに変化するガラス遷移現象である。 近年統計物理の分野においてガラス遷移現象における非常にゆっくりとしたダイナミクスが注目を集めており、多くの機関で精力的に研究が行われている[1]。
 本研究では二成分コロイド分散系を対象とし、Ni80P20のモデルとして知られるKob-Andersen型の相互作用を用いて、 ブラウン動力学法を用いた大規模計算機実験を行う[2, 3]。 得られたデータについて理論と比較、解析方法の検討を行い、過冷却液体、ガラスの性質の解明に資することを研究目的とする。

図1: 計算モデルのスナップショット
SNP

B. 研究成果[4]

 図2に平均二乗変位(Mean square displacement, MSD)の計算結果を示す。 低温においては中間時間領域でケージ効果によりMSDの値があまり変化しない領域が観測された。

図2: 平均二乗変位の時間変化
MSD

 図3に自己中間散乱関数(Self-intermediate scattering function, SISF)の計算結果を示す。 低温においては過冷却液体等に見られる二段階緩和が観測された。
図3: 自己中間散乱関数の時間変化
SISF

 今後は計算を継続し、解析方法について検討していく予定である。



By 木村祐人 (平成19年度M1)

参考文献

1
P. G. Debenedetti and F. H. Stillinger, Nature, 410 (2001), 259.

2
W. Kob and H. C. Andersen, Phys. Rev. Lett., 73 (1994), 1376.

3
E. Flenner and G. Szamel, Phys. Rev. E, 72 (2005), 011205.

4
木村祐人, 徳山道夫, 寺田弥生, 東北大学流体科学研究所報告書, 19 (2007).

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