8. 神経繊維におけるイオン濃度変化と
活動電位の伝導に関する研究
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A. 研究目標 B. 研究成果

A. 研究目標

 脳・神経システムは多数の神経細胞からなる情報処理システムであり, 各神経細胞は情報処理素子, あるいは情報伝播素子として働く[1]. 神経細胞は, 細胞体, 軸索, 樹状突起からなり, 下図のような形状をしている. 細胞内外はイオン種ごとに濃度差を持っており, 膜内外の電位差は膜電位と呼ばれる. 信号は活動電位と呼ばれる膜電位の特徴的な変化によって表現される. この電気的特性は細胞膜上に分布する多数, 多種の膜タンパク質によって実現される.
neuron
何本にも枝分かれする軸索は数mm程度の長さを持っており, 従って, 伝播に伴うタイムラグは無視することができないと考えられる. 神経細胞の空間的構造の伝播速度への影響はRallらによって, 軸索を電線に見立てることで与えられている[2]. しかし, 軸索における活動電位の伝播は細胞内外に存在するイオンの電気拡散によるものである. 本研究では活動電位の伝播における細胞内外イオン濃度変化の効果を示すことを目的とする. ただし, 活動電位の発生におけるダイナミクスについてはHodgkin, Huxley型のモデル[3]を用いるものとする.


B. 研究成果

 電気拡散方程式をもとに膜電位の伝播方程式を導き, イオン濃度変化の効果を示した. イオン濃度変化が平衡濃度に比べ十分小さい場合には, イオン濃度変化の効果は無視できるほどに小さく, Rallらによる電線方程式が満たされることを示した.

参考文献
[1] P. Dayan and L. F. Abbott, "Theoretical Neuroscience", the MIT Press, MA (2001).
[2] W. Rall, Exptl. Neurol., 1, 491-527 (1959).
[3] A. L. Hodgkin and A. F. Huxley, J. Physiol. 116, 449(1952).



文責 : 浅野 哲理 (研究生)

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