7.内部・外部雑音がべナール対流発生に及ぼす影響の研究 
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A. 研究目標 B. 研究成果

A. 研究目標

 重力下において,下方から熱せられた液体の層を考える(図1).層の上下の温度差がある値以上になったときに,液体が図1のようなロール構造(もしくは六角形構造)を形成することはよく知られている.この現象は熱対流現象と呼ばれていて,身近にも,自然界のいたるところで確認することができる.


             図1:対流のロール構造

 この現象の発生する温度差の近傍での流体中のパターンを記述する方程式としてはスウィフト・ホーヘンバーグ方程式が最もよく知られている.また,ロール構造の記述についてはニューウェル・ホワイトヘッド方程式もよく知られている.

 この現象において,たとえば上下の温度差に「揺らぎ」をかんがえると,対流が発生しやすくなるという報告がなされている.本研究の目的は,流体内部の熱雑音,外部から加えた雑音が,対流発生にどのような影響を及ぼすのかを研究するところにある.視点としては,乗法的な雑音の扱いの方法や,どのようにしたらもとの流体力学方程式(ナヴィエ・ストークス方程式)から対流発生点近傍の流体のダイナミクス(時間変化)を記述する方程式を導出することができるのかという方法論に着目していきたいと考えている.熱対流現象にかかわらず,同様なメカニズム,方程式を持つ系全般に対して興味を持っている.


B. 研究成果

 図1のような流体系に対しては, ナヴィエ・ストークス方程式にブシネ近似という近似を施しても良いことが知られている [1]. 近似後のナヴィエ・ストークス方程式をブシネ方程式と呼ぶことにする. 本研究では, このブシネ方程式の運動量保存の方程式とエネルギー保存の方程式へ加法的に雑音を加えた. この雑音を加えられたブシネ方程式を確率ブシネ方程式と呼ぶことにすると, 今回, 確率ブシネ方程式から, 対流発生点近傍で不安定性を起こすモードで構成される波束(準秩序変数と呼ぼう)に対する方程式を導出した場合, 準秩序変数に対する方程式は, 乗法的な雑音をも含んだ方程式になることがわかった. これらの乗法的な雑音はこれまでの研究では全く議論されることの無かったものである. さらに, これらの乗法的な雑音の評価のために非畳み込み形の射影演算子法を用いた [2]. その結果, これらの雑音の影響は, これまで知られていたニューウェル・ホワイトヘッド方程式の係数への補正と, ニューウェル・ホワイトヘッド方程式の解に依存する新しい雑音に現れることもわかった [3]. 今回の研究では自由境界条件を適応したため, 現実的な境界条件への拡張が求められる.

参考文献
[1] S. Chandrasekhar, Hydrodynamic and Hydromagnetic Stability (Dover, 1981).
[2] M. Tokuyama, Statistical-Dynamical Theory of Nonlinear Stochastic Processes, Physica A 109, 128 (1981).
[3] K. Hidaka and M. Tokuyama, to be published ?



文責 : 日高 邦昌 (博士課程前期2年の課程2年)

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