近年,世界の自動車産業を取り巻く状況は激動の時代を迎えており,電動化(EV化)への流れが
急加速しております.このような社会情勢の中で,自動車部品メーカーに求められる製品開発・
生産技術は従来型の内燃機関をベースとしたエンジン用技術から電動化に直結した駆動要素技術
へと大きな変革期を迎えつつあります.さらに,多くの自動車関連企業は競争力を維持するため
に,バリューチェーン全体にわたる様々な変革が予想されるとともに自動運転化に伴う制御用ソ
フトウエア開発の重要性は増しており,部品の設計・開発においてもソフトウエア・ハードウエ
ア開発の水平分業化が進展するものと予想されます.以上に見られる自動車技術の一大変革期に
おいては,産学の分野を超えて連携できる環境を提供する異分野研究者・技術者との共創に基づ
くプラットフォームの構築が急務であると考えられます.
このような状況から,東北大学流体科学研究所と日立Astemo株式会社は、共同研究部門「先端車輌基盤技術研究
(ケーヒン)」(平成27年4月〜令和2年6月)を共同で推進し、第一期、第二期と成果を得ることができました.
新たにに設置される第三期は、「先端車輌基盤技術研究(日立Astemo)V」として、低炭素社会の実現に向けた将来
の車輌電動化に対し、モータを駆動する次世代インバータの超小型・軽量・高出力として期待される基盤技術の研究
を推進いたします.
東北大学流体科学研究所は、このような次世代技術の研究をもとに、日立Astemo株式会社との共同研究を実施
することにより環境性能に優れた魅力ある製品開発に直結した新しい価値創出を目指します.共同研究の実施に
おいては今後の電動化部品開発・研究において重要と考えられる以下4つのテーマを推進します.
●次世代インバータ向け新たな冷却システム構築と要素技術研究
次世代インバータの超小型化を実現するために、気液二相流による伝熱促進技術を習得し、新たな冷却システム
の確立を目指します.
●レーザー溶融接合技術の数値解明
次世代インバータ銅配線の小型化と短時間接合を実現するために、レーザーによる固相から液相への数値解明
による溶融接合技術の確立を目指します.
●はんだボイド発生予測技術の解明
次世代インバータの超小型化を実現するために、はんだ接合部信頼性向上に向け、はんだボイドの発生メカニ
ズムの解明と予測技術の構築を目指します.
●新冷却技術、レーザー溶融技術の最適化手法の構築
超小型で信頼性の高い次世代インバータ実現のため、新冷却技術とレーザー溶融技術の最適化手法の構築を
目指します.