研究概要

　太陽光下では黒色の物体は熱くなるというのが一般的な認識である。本研究室では太陽光下でも暑くならない「冷たい黒」を実現させようと、塗料を開発している。ナノ・マイクロスケールにおいて粒子の散乱現象を制御することで塗料の反射性能をコントロールしている。粒子の大きさ、膜厚、体積分率等を選定することで、夏季の太陽光下で一般的な黒体塗料よりも10℃低い黒色塗料を実現した。本研究室ではこれをクールブラックと名付けた。クールブラックを用いることで家屋や車の冷房負荷を低減することが可能となる。

反射率測定と太陽光曝露実験

　Figure 1 に一般的な黒色塗料とクールブラックの分光反射率測定結果を示す。一般的な黒体塗料は全波長領域で反射率が低い。それに対し、クールブラックは目に見える可視光に対しては反射率が低く、熱に大きく影響する近赤外光に対しては反射率が高くなっている。このように可視域と近赤外域で波長選択性を実現している。
　Figure 2に一般的な黒色塗料とクールブラックを夏季の炎天下で赤外線カメラにより観察した画像を示す。可視画像では両サンプルとも黒色を呈しているのに対し、クールブラックの方が温度が低くなっていることがわかる。

Fig.1 分光反射率測定結果

Fig.2 夏季炎天下での赤外線画像

研究業績

H. Gonome, M. Baneshi, J. Okajima, A. Komiya, S. Maruyama

Controlling the radiative properties of cool black-color coatings pigmented with CuO submicron particles

Journal of Quantitative Spectroscopy and Radiative Transfer, Vol. 132, pp. 90–98, 2014.

H. Gonome, M. Baneshi, J. Okajima, A. Komiya, S. Maruyama

THERMAL PERFORMANCE OF BLACK CUPRIC OXIDE SUBMICRON-PARTICULATE COATINGS : EXPOSURE TEMPERATURE MEASUREMENT

Proceedings of the 7th International Symposium on Radiative Transfer, RAD-13, p. SH2, 2013.

H. Gonome, M. Baneshi, A. Komiya, S. Maruyama

Radiative Properties of Spectral Selective Coatings Pigmented with TiO2 Nanoparticles

Heat Transfer -Asian Research, Vol. 42, No. 4, pp. 352-363, 2013.

（原著論文）

江目宏樹，M. Baneshi，小宮敦樹，円山重直

波長選択性を有したTiO2ナノ粒子群機能膜のふく射特性に関する研究

熱物性, Vol. 24, No. 4, pp. 177-182, 2010.

M. Baneshi, H. Gonome, A. Komiya, S. Maruyama

The effect of particles size distribution on aesthetic and thermal performances of polydisperse TiO2 pigmented coatings: Comparison between numerical and experimental results

Journal of Quantitative Spectroscopy and Radiative Transfer, Vol. 113, No. 8, pp. 594-606, 2012.