File.19水処理技術をもっと身近に

 上原先生が取り組む研究テーマの一つは、プラズマを使った水質浄化の実用化だ。 流体に電圧を掛けて発生させたプラズマには、流体に含まれる物質を活性化させ、細菌やウイルスを殺したり、 流体に新しい機能を持たせたりする効果がある。そのため水処理や殺菌、脱臭など幅広い用途が期待されている。
 ただしプラズマを発生させるためには、高い電圧を掛けなければならない、数千度以上の高温になる、 減圧する必要があるといったことから、装置は大掛かりでコストも高くなりがちだ。 そのため小型化して一つの装置としてまとめ上げるデバイス化のための取り組みが必要になる。 上原先生は、DNAシーケンサーの一分子流動計測の研究に取り組んでいた経験をもとに、 比較的、小型化に向いている非平衡熱プラズマの装置の小型化に関する研究に取り組む。
 現在は、まず小さな領域においてプラズマと流体がどう相互作用するかを解析と 実験の両面から明らかにしようとしている。ハイスピードカメラを使った微小空間の可視化計測という手法によって、 レーザーをフラッシュのように流体に照射し、文字通り流れを目に見えるようにして、 プラズマと液体界面の相互作用を調べるのだ。
 現在プラズマの応用は基礎研究の段階だが、より常温に近く、より簡単な装置による プラズマ発生が可能になっており、応用範囲は広がりつつある。 いずれは水処理装置を家庭に置くことができたり、さらに持ち運べたりするほどのサイズになるかもしれない。 その時、生活がどう変わるのか楽しみだ。

音楽をよく聴くとのことで、モーリス・ラヴェルが好きだそうです。弾く方にもチャレンジしてみたいものの、 なかなか難しいとか。一方、ランニングも趣味だそうです。 昨年の松島ハーフマラソン大会に続いて今年は山形で行われるハーフマラソンにも参加予定で、 広瀬川沿い(右の写真)でランニングとダンシングをしているそうです。

上原 聡司
Satoshi Uehara
東北大学 流体科学研究所 助授
2009年に大阪大学基礎工学部卒業。2014年に大阪大学大学院基礎工学研究科にて博士号取得。
同基礎工学研究科での特任研究員を経て、2014年6月に東北大学流体科学研究所に助教として着任。
  • ●機能性流体
  • ●非平衡熱プラズマ
  • ●磁性流体
  • ●気液界面
  • ●微小空間流動計測
  • ●化学反応