File.20インフラや工業製品の信頼性を確保する

 内一先生の取り組む非破壊検査は名前の通り、分解したりせずに対象の内部を観察する技術だ。 稼働中のプラントの配管や、建築構造物、輸送システムの部品などの内部の状態を調べて、材料の劣化などによって引き起こされる事故の予防に役立てる。 内一先生が取り組む手法では、電磁現象を用いる。例えば「渦電流探傷試験」は、調べたい金属などに磁場を掛けると材料内部に誘導電流(渦電流)が発生することを利用する。 内部に亀裂などがあれば電流の値が変化するため、それを検出する。また亀裂になる前の材質の変化を捉えることにも取り組んでいるという。
 現在先生が取り組んでいる対象の一つが、液体燃料ロケットの燃焼室の亀裂の検出だ。燃焼室の内部は3000℃もの高温になり、外部には-253℃の液体水素が流れている。 中と外を隔てる銅合金の壁にはとても大きな負担がかかる。そのため燃焼試験のたびに検査が必要だという。
 非破壊検査は製造業でも需要が大きい。例えば自動車のような普段当たり前に使っている製品の材料も、どういうメカニズムで強度を保っているのかなど、わかっていないことが多い。 そういった経験と勘の蓄積によって作られている材料の内部構造を正確に理解することで、より高性能の製品を効率的に作ることが期待されている。
 このような検査技術の研究は、製造元の企業や設備管理の現場、材料や流体の研究者と協力して進めることが欠かせない。 また検査対象は多くの分野にわたり、材料の段階から製造中、製造後など様々な段階が対象になるのもおもしろいところだそうだ。

食事がおいしい国といえばフランスが思い浮かびますが、その中でも有名なのがフランス第2の都市リヨンです。 先生はリヨンの研究機関と共同研究を行っており、訪問の際は食事も楽しみだとか。 またリヨンは都市の規模や雰囲気が仙台に似ており住民も親切で、過ごしやすい街だそうです。

内一 哲哉
Tetsuya Uchimoto
東北大学 流体科学研究所 教授
1998年、東京大学大学院工学系研究科にて博士号取得。東京大学大学院工学系研究科助手、2001年東北大学流体科学研究所講師、 助教授を経て、現在教授。2004年12月より4ヶ月、および2011年9月より10ヶ月、フランス国立応用科学院リヨン校 (INSA-Lyon) の客員教員。
  • ●電磁非破壊センサ
  • ●オンラインモニタリング
  • ●高温環境センサ
  • ●センサ融合
  • ●流動誘起損傷評価
  • ●材料劣化診断