File.33炎の温度はどうやって測る?

 炎や自動車、ロケットのエンジン内部などにおける温度はとても高いため、簡単に測定することができない。こういった燃焼現象の温度を測定するために早川先生が取り組むのが、「LITGS(リグス)」という方法だ。この方法では、レーザーを使って温度を測る。レーザーを炎に当てると、炎の部分にのみ存在する特定の成分(化学種)にだけエネルギーを与えることができる。化学種はもらったエネルギーをすぐに放出するが、そのときに音波を発生させる。音の速度は温度に比例する。そのため、音の速度を測れば、炎の温度を求めることができるのだ。
 LITGSは高温を測定するほかの方法と違って、正確な値をすぐに求められるという特徴がある。また圧力が高いほど計測がしやすくなる。そのため、ロケットエンジンのような高圧かつ高温の条件における温度測定に適していると考えられているのだ。
 燃焼現象の温度を測定することは、エネルギー問題に取り組むうえでも重要になる。とくに「現在研究されている水素エネルギー利用にも関係してくる技術になります」と先生は話す。水素の利用形態の一つとして、水素からアンモニアを作り、燃料として使用することが検討されている。ただしアンモニアの燃焼についてはまだ分かっていないことが多い。LITGSを使えば、アンモニアの炎の温度も、独自の化学種を目印にすることで測定できる可能性がある。先生の研究は燃焼現象をより深く知るとともに、発電やエンジンの効率化など、現代のエネルギー問題の解決にも貢献していくだろう。

音楽が趣味で、好きなジャンルはパンクロックやスカだそうです。モッシュピットがあるような激しいライブに参戦することも。ただ、応援するバンドが解散してしまうことも多いそうです……。高専の先輩の趣味に影響されて、音楽は速い方が格好いいと思うようになったとのことです。

早川 晃弘
Akihiro Hayakawa
東北大学 流体科学研究所 准教授
2006年に津山工業高等専門学校を卒業後、九州大学工学部に編入学し2008年に卒業。2013年に九州大学大学院工学府にて博士号を取得。同年より東北大学流体科学研究所助教。2015年4月から2016年3月まで英国ケンブリッジ大学滞在研究員。
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