File.45ドローンで火星の洞窟を探検!

 藤田先生が取り組むのは、火星で飛ばすドローン(無人で飛行する航空機全般)の研究だ。航空機が揚力を得るためには大気がいる。ただし火星の大気の密度は地球の100分の1で、地球と比べれば“真空タンク内で飛ばすようなもの”。また重力も地球の3分の1と小さい。さらに、火星まで持ち運べるサイズには制限がある。そのため翼を折りたたみ、上空から落下させながら翼を展開する飛行機を検討中だ。地球の飛行機は直接は参考にできないため、サイズや翼の形などを一から検討したという。
 火星飛行機によって観測しようとしているものの一つが火星の地磁気だ。火星の地表には、地磁気の縞模様が発見されている。これは地磁気の反転が起こった可能性を示唆するものだ。火星の人工衛星は地表から遠くを回っているため、地磁気の分布を詳細に調べることはできない。またローバーは広い範囲の観測が難しい。その点で、飛行機は地磁気の観測に最も向いた探査機だといえるのだ。
 一方、火星には多くの縦穴が存在している。その探査のため、先生はヘリコプターなど小回りの利く回転翼機の研究にも取り組んでいる。縦穴の内部は火星の火山活動を知るうえで興味深いだけではない。紫外線や宇宙線が届きにくく温度変化が穏やかだと考えられるため、将来、人の滞在場所になる可能性がある。またそのような環境は、火星にいるかもしれない生命にとっても過ごしやすい場所のはずだ。地球外で飛ぶ飛行機やドローンは、どんな形をして、どんなものを私たちに見せてくれるのか楽しみだ。

趣味の一つが、地図を見ずに知らない場所を散歩することだそう。街中だと個性的な店、自然の多い地域では景色のよい場所など、思いがけない発見が楽しいとのこと。現在も引っ越したばかりなので、近所を歩くのが目下の楽しみだそうです。またいろんなジャンルのコンサートに行くのも趣味とのことです。

藤田 昂志
Koji Fujita
東北大学 流体科学研究所 助教
2008年に秋田工業高等専門学校を卒業後、東北大学工学部に編入学し2010年に卒業。2015年に東北大学工学研究科航空宇宙工学専攻にて博士号を取得。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所を経て2017年10月より東北大学流体科学研究所の助教。 2017年度に日本航空宇宙学会賞(奨励賞)を受賞。
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