File.49深層学習で可視化する血液の流れ

脳動脈瘤をはじめとする血管の病気について知る上で、血管内の流れを調べることはとても重要だ。安西先生は、シミュレーションにより血管内の流れを可視化し、血管内に配置するステントなどの医療器具の研究開発に取り組んできた。
そんな安西先生が医療現場の要望に応えて開発したのが、血管の画像からすばやく3次元的に血液の流れを可視化するソフトウェアである。従来は患者一人一人の血液の流れを可視化するのには大きな労力がかかっていた。まずCTやMRIによって撮影された患者の体の断面画像から、血管を抜き出して3次元データをつくる。これにデータ変換や修正を加えた上で流体解析を行い、可視化や結果の確認作業を行っていた。
「流体解析が診断や手術前の検討などの役に立つことはわかっていたものの、現場の先生たちは非常に忙しい。そこでもっと手軽に流れを可視化したいというニーズがありました」(安西先生)。
先生は、CTやMRIの画像データと、解析によって得た流れ場のデータセットを大量に用意し、人工知能(AI)技術の一つである深層学習(ディープラーニング)を用いてモデルに学習させた。これにより、画像から流れ場を直接予測するモデルを作り上げた。今まで何日も掛かって計算していたところを、ソフトを立ち上げてからたった1、2分で結果が得られるようになったという。これにより、より高度な診断が容易に行えるようになった。これからも新たなテクノロジーを駆使することで、医療の形はさらに進化していくだろう。

現在はリモートワークが中心ですが、家では愛猫と過ごしながら仕事をしているそう。大学の川内キャンパスで子猫の時に拾って以来、どこへ行くにも一緒だとか。スイスへの2度の長期出張の際は、渡航の3か月前から準備を始めるなど大変でしたが、貴重な体験ができたそうです。