研究成果の詳細例

ポリマー分解燃焼

ポリマー分解燃焼

この分野では、廃棄物燃焼の現象解明と環境負荷物質の排出低減、有害廃棄物の安全な燃焼処理を行うための基礎研究を行っています。
廃棄物は様々な物質な物質から構成されているため、熱分解温度などの特性にばらつきがあります。そのため、従来の廃棄物処理炉では炉内の成分が局所的に変化し、炉内温度分布に偏りがうまれ、窒素酸化物(NOx)やダイオキシン類などの有害物質が生成されてしまいます。現在、廃棄物炉内の燃焼不安定性を解消するために、高温空気燃焼技術を適用した廃棄物処理炉が開発されています。しかし、廃棄物の特性にあった制御はいまだ行われておらず、そのためには廃棄物燃焼の現象の把握が不可欠です。

ここでは廃棄物の代表格であるポリマー(プラスチック)、その中でも汎用ポリマーであるポリプロピレン(PP)・ポリエチレンテレフタレート(PET)や、メタクリル酸メチル(アクリル、PMMA)の燃焼についての研究を行っています。

ポリマー分解燃焼 ポリマー分解燃焼

上の写真は、同じ条件(酸化剤温度:500度、酸化剤:空気+水蒸気)で燃やした場合の火炎写真(a)PP、(b)PETです。PETでは輝炎(すす)やPET表面にチャーの堆積が見られますが、PPの場合は見られません。このように、ポリマーの種類によって火炎の様子は異なり、廃棄物炉において重要な特性値である燃焼速度(固体表面の減退速度、燃料の消費速度)の変化も異なります。また酸化剤の組成の影響も大きく、特に燃焼生成物である水蒸気と二酸化炭素の効果に着目した研究を行っています。

ポリマー分解燃焼

ポリマーを始めとする固体の燃焼は、固気液三相を含む不均質燃焼であり、固体の熱分解、液相の内部流れ、気相の流れ、気相での化学反応、相変化、輻射など燃焼要素過程が非常に複雑です。
燃焼現象の把握のためには、実験のみならず数値解析による研究も必要になってきます。

ここではPPを対象とした数値計算モデルを構築し、数値計算による研究も行っています。
左図は数値計算モデルです。

ポリマー分解燃焼

実験で検証が難しいものに、火炎からの輻射があります。
右図は酸化剤をCO2希釈した場合の、気相での火炎温度分布および輻射熱損失分布の数値計算結果を示したものです。原点0はPP表面を示しています。火炎の両側で負の輻射熱損失、つまり輻射熱の吸収が起こっている事がわかります。この輻射熱の吸収は、火炎からPPへの輻射熱輸送が阻害されている事を示すものです。H2O希釈の場合、この輻射熱の吸収は、この酸化剤温度ではほとんど起こりません。
この違いはH2OとCO2の輻射特性の違いによるものです。

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