研究成果の詳細例

超音速燃焼

次世代の宇宙往還機「スペースプレーン」や東京-ワシントン間を2時間で飛行できる極超音速飛行機のための新しい航空宇宙エンジンとして、スクラムジェットエンジン(図1)の研究・開発が各国で行われています。風の強い日にライターがつきにくいように、速い流れの中で火炎を安定させることは非常に困難です。しかし、スクラムジェットエンジン内の流れは超音速であり、今までの亜音速流れの燃焼器と比べるとまさに極限状態での燃焼技術が要求されます。私たちは、そんな極限状態での燃焼「超音速燃焼」の安定・制御ついて研究を行っています。

超音速燃焼

高速流で火炎を保持する基本的な原理は、部分的に遅い流れの領域を作り、そこに火種を形成することです。具体的な手法として、ストラット(図2)と呼ばれるくさび形状を超音速流に配置し、その背後に燃料を供給します。または壁面から超音速主流に燃料を垂直に噴射します(図3)。これらの方法により超音速流中でも火炎を形成することができます。一方で、大きすぎるストラットや強すぎる燃料噴射はエンジンの効率を低下させますし、小さすぎるストラットや弱すぎる燃料噴射では火炎を形成できません。したがって両者の最適な条件を探すことが研究の目的になります。

超音速燃焼

流速のほかに、従来の燃焼器とスクラムジェット燃焼器の大きく異なる点は衝撃波の存在です。機体の飛行高度や飛行速度が変化すると、スクラムジェット燃焼器内の衝撃波の位置や強さは大きく変化します。衝撃波と燃焼場は互いに干渉し、超音速燃焼の制御や安定性に大きな影響を及ぼすことがわかっていますが、そのメカニズムの詳細はわかっていません。そこで、ストラットや壁面噴射を用いた超音速燃焼場と衝撃波の干渉現象の研究を行っています。

超音速燃焼
超音速燃焼

超音速燃焼の制御が難しい理由は、その複雑な現象そのもののほかに、その極限環境下における計測が難しいという問題があります。

そこで、超音速流れ場の各種計測方法の開発を行っています。図6は粒子追跡速度計法(PTV)を用いて衝撃波周りの速度分布を計測した結果です。
速度分布は燃料の混合拡散を知る上で重要な情報になるので、これを超音速燃焼場に適用する研究を行っています。

このように実験で得られた限られた情報を最大限有効利用するため、実験と数値計算による融合計測手法の研究を行っています。
PTVで得られた速度情報を逐次スーパーコンピューターに転送し、実験結果を利用しながら数値シミュレーションを行います。これにより、従来の計測法とは比べ物にならない量の情報を得ることができます。開発された融合計測手法を用いて、超音速燃焼場をリアルタイムに予測し、制御することを目指しています。

超音速燃焼

(現在、同じ流体研の丸田・中村研究室(エネルギー動態研究分野)と共同で研究を進めています)

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