国際民間航空機関(ICAO)が2022年10月に2050年CO2排出ゼロを宣言した[1]ように、航空産業においてもカーボンニュートラルが重要な目標となっている。一方、これに先立ち同機関が2022年3月に出したレポート[2]では、3つの将来シナリオを検討するも2050年排出ゼロに至らず、技術的な困難さが浮き彫りになっている。
航空輸送のカーボンニュートラルには、大きく3つの方法がある。再生航空燃料(SAF)の利用、水素の利用、電動化である。SAFは供給量に課題があり、水素は液体水素等の可搬性の問題があり、電動化には電池等の重量の問題がある。このうち、電動化に着目すれば、電池を用いる純電動航空機より、ガスタービンを発電に用いるハイブリッド化に期待が集まっている。しかし、あくまでカーボンニュートラルを考えるのであれば、ハイブリッド航空機でもガスタービンに脱炭素燃料を用いることが望ましい。
一方、水素キャリアによる発電という観点から見ると、運搬並びに貯蔵が容易でコストが安いことから、水素に代わる脱炭素燃料としてアンモニアが注目されている。特に、アンモニア発電の鍵技術であるアンモニア燃焼については、我が国が世界のトップを走っている[3]。
そこで、本研究では、航空輸送における2050年CO2排出ゼロを目指して、アンモニア燃焼によるハイブリッド電動航空機の実現可能性を検討する。この検証のために、アンモニアハイブリッド航空機の概念検討、アンモニアハイブリッド推進システムの研究開発、航空用アンモニア燃焼器の基礎研究の3つの側面から研究開発を進める。