研究内容


液体ロケットターボポンプに発生するキャビテーション不安定現象の研究

Cavitation Instabilities in Liquid Propellant Rocket Turbopump

液体ロケットエンジン・ターボポンプインデューサではキャビテーション不安定現象と呼ばれる振動現象が発生することがあります.この不安定現象は,ロケット推進剤の流量の異常振動や回転非同期の軸振動,ポンプ性能の低下を引き起こし,さらには重大事故の原因となった事例も報告されています.本研究室では,このキャビテーション不安定現象の数値予測,抑制・制御手法の開発,発生メカニズムの解明などを,スーパーコンピューティングを用いた数値解析により行っています.

Effect of Casing Treatment on Cavity Structure

Conventional Casing
(Without Step)
(t = t0 + 21.75 [ms])
Modified Casing
(With Step)
(t = t0 + 19.50 [ms])

Iso surface of void fraction (α =0.1), vortex core line and velocity vector distribution at the time of maximum cavity volume (σ = 0.054)

Ref. M. Onozawa, Y. Iga, et al., Proc. AFI/TFI2007

Occurrence Mechanism of Rotating Cavitations

Three-blade Cyclic Flat-plate Cascade

Schematic diagram of the rotating cavitations in the inducer in the rotational coordinate system explained by the present mechanism

Ref. Y.Iga and Y. Yoshida, J. Propulsion and Power (2011)

  


高温高圧水タンネル実験によるキャビテーション熱力学的効果の解明

Experiment of Thermal Effect on Cavitation by High Temperature Water Tunnel

液体ロケットエンジンの推進剤である液体水素,酸素でキャビテーションが発生した場合,キャビテーション熱力学的効果と呼ばれる効果が現れます.これは,キャビテーションの体積を抑制し,ロケットポンプの性能を向上させる,好ましい効果です.この効果は,極低温流体や高温水で顕在化することが知られています.多くの原子力発電プラントが停止中の現在,CO2やSOx等の排出を低減できるLNGを用いたクリーンな火力発電の早急な普及が望まれていますが,LNGポンプでも同様にキャビテーション熱力学的効果が顕在化します.本研究室では,キャビテーション熱力学的効果の有効利用と数値解析モデルの構築を目指し,高温高圧水キャビテーションタンネル実験を行っています.

Thermal Effect on Cavitation by Hot Water

High-temperature and High-pressure Water Cavitation Tunnel
Thermal parameter of cavitation Σ [m/s2]
The aspects of cavitation around NACA0015 hydrofoil in a water at various temperature
  


キャビテーション数値解析モデルの高度化とスーパーコンピューテイング

Advancement of Cavitation Model and Super Computing

キャビテーションは,気泡の合体・分裂,膨張・収縮,蒸発・凝縮,相非平衡,マイクロジェット,カウンタージェット,気液スリップ,動的固気液接触,界面不安定,はく離,渦,乱流,リエントラントジェットなど,数多くの流体/流動因子が複雑に連成する流動現象です.キャビテーションのCFD(数値シミュレーション)の分野では,これまでに多くのモデルや解析手法が開発され,最近ではそれらを実装した汎用ソフトウェアも手に入るようになってきました.しかし,最も単純な流れ場と言える単独翼まわりのキャビテーション流れであっても,特に高迎角の遷移キャビテーション状態では,時間平均揚力すら予測できないのが現状です.キャビテーション流れの予測精度の向上はCFDの分野に残された課題であると言え,本研究室でも,キャビテーションモデルや解析手法の改良に取り組んでいます.

Current Common Problem in CFD

Industry-University Collaborative Project in Turbomachinery Society of Japan Benchmark Simulation of Cavitating Hydrofoils
Bench mark calculation by 6 research groups and 4 software? venders
? Time averaged lift performance (left) and pressure distribution on the hydrofoil surface (right) of NACA0015 single hydrofoil ?

Ref. C. Kato, Proc. AJK2011-FED, Hamamatsu (2011), AJK2011-06084

Modification of Phase Change Model based on the Idea of Apparent Phase Equilibrium

Ref. Experiment

Ref. 柏田, 伊賀, キャビテーションに関するシンポジウム(第17回)講演論文集

  


油圧作動油中で発生する気体性キャビテーションの数値解析モデルの構築

Modeling of Gaseous Cavitation in Hydraulic Oil Flow

キャビテーションは水だけでなく、産業機械、輸送機器など幅広い分野で用いられている油圧作動油においても発生します。水と油ではキャビテーション発生に関わる物性値が大きく異なることから、作動油中のキャビテーション現象の発生メカニズムは水とは異なると考えられており、この現象を解明することは工業製品の性能向上、騒音抑制などに繋がると期待されます。しかしながら、水を対象としたキャビテーションの数値解析手法の研究開発が多く行われている一方で、油を対象とした解析手法の研究は多くありません。そこで本研究室では、石油系油圧作動油を対象とし、実験と数値解析の両面から油中キャビテーションの発生特性を調査し、発生メカニズムを解明することにより、気体性キャビテーションの数値解析モデルを構築することを目指しています。

Consideration of Influence of Dynamic Stimulation to Gaseous Cavitation

Comparison of distribution of dynamic stimulation in numerical simulation with visualization result of cavity in oil flow in diverged sudden-converged nozzle

Ref. 松浦,熊谷,伊賀, 日本機械学会東北支部 第52期総会・講演会 No.168.

  


熱による蒸気気泡の成長およびその熱輸送過程のモデリング

Modeling on thermal growth of vapor bubble and its heat transport

多くの熱交換機構や化学プロセスにおいて気液界面を通じた熱輸送過程は重要です。沸騰現象に代表されるように熱によって蒸気気泡は膨張し、その形状を変えながら移動し熱を輸送します。このような蒸発を含んだ熱輸送過程は非常に良い熱伝達特性を持ち、様々な熱流体システムで重要な現象です。実用においては流体内の熱移動だけではなく、流体が接触している固体壁との間の熱移動を考える必要があります。しかしながら、固体壁面上の熱流体現象は、濡れ特性による固気液三相接触線や薄い液膜の形成と蒸発が小さなスケールで生じるため、そのマルチスケール性を考慮した解析モデルが必要となります。本研究室では、これらの現象の理解と熱流体システムの高性能化のために、壁面近傍で生じる相変化を伴う熱流体現象のモデル化とその数値シミュレーションを進めております。微細管内で生じた蒸気気泡の膨張による液膜形成過程や動的接触線での蒸発現象を考慮した対流沸騰熱伝達の解析などを行っています。

Vapor Bubble Expansion and Evaporative Heat Transfer in Microchannel

Snapshot of vapor bubble expansion in microchannel from numerical simulation and bubble shape and heat flux distribution during that process

Ref. J. Okajima, P. Stephan, Int. J. Heat Mass Trans. 136, pp. 1241-1249. (2019)

Convective Boiling of Single Bubble with Considering Contact Line Evaporation

Concept of contact-line evaporation model and numerical simulation of convective boiling of single vapor bubble in shear flow

Ref. 岡島, Stephan, 混相流シンポジウム (2019)