File.25検査が構造物の設計を変える

 乗り物や建築物の骨格となる材料には、昔から鉄やアルミ合金といった金属が使われてきた。 近年、この金属の代わりに採用が進んでいるのが、繊維強化複合材料だ。特に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は金属より抜群に軽く、 しかも何倍もの強度を持つ。ただしCFRPは、内部に発生する欠陥を検査する非破壊検査の方法が金属ほど十分に確立されていない。
 そこで小助川先生が取り組むのが、「渦電流探傷法」を用いる方法だ。 この手法では、材料にコイルを近づけてIH調理器のように材料内部に誘導電流(渦電流)を発生させ、 渦電流が作る磁場を検出する。内部に欠陥があれば磁場の変化によって知ることができる。 さらに渦電流や磁場を増強する性質をあらかじめCFRPに持たせておくことで、検出性能を高めることも可能だ。 この機能追加は簡単に行うことができ、強度が落ちるといったこともない。また製造後の製品だけでなく、製造中の材料にも対応できるという。 将来的には先生が写真で持つ風力発電のブレードのような大型の製品の検査や、その24時間監視なども可能にしたいという。
 先生は、「検査技術は、製品の設計にも影響を与えるものです」と話す。CFRPの精密な検査が可能になれば、 今は余裕を持たせて頑丈に作られている骨格をよりスリムにしたり、自由な形状が作れたりするようになる。 また重量が減れば、材料費やそれを運ぶための燃料を減らすこともできる。検査技術は製品の安全を守るだけでなく、 未来の製品のデザインやエネルギー消費を変える可能性も持っているのだ。

先生は旅行が好きとのことですが、大平原や半島の一番端など一味違った場所を目指すことが多いとか。 またカヌーやスキューバダイビング、乗馬など、いろんな移動手段も体験してきたそうです。 先生にとって旅行の楽しみは、行動範囲や行動手段を広げていくところにあるそうです。

小助川 博之
Hiroyuki Kosukegawa
東北大学 流体科学研究所 特任准教授
2011年に東北大学大学院工学研究科にて博士号取得。同年、東北大学 流体科学研究所にてグローバルCOEプログラムのリサーチフェロー、 同年フランスのエコール・セントラル・リヨンにて博士研究員、2013年より東北大学 流体科学研究所の助教。
  • ●繊維強化複合材料
  • ●ダイヤモンドライクカーボン
  • ●電磁非破壊検査
  • ●機能性高分子
  • ●バイオトライボロジー
  • ●疑似生体モデル