File.40水面を走れる!?ダイラタンシー流体

 田先生は「MR(磁気粘性)エラストマー」や「STF(せん断増粘流体)」など、特殊な機能を持たせた材料の研究を行っている。エラストマーはゴムの仲間で、MRエラストマーは、主に天然ゴムやシリコーンゴムに磁気を帯びた鉄粒子を混ぜて作られる。これに磁場をかけることで、その性質を変化させることができるのだ。
 先生は、鉄粒子を斜め45度に配列させたMRエラストマーを作り、免振・制振装置として利用できないか研究している。免振・制振装置は一般的に積層ゴムでできており、建築物の柱の根元に設置されて揺れを吸収する。先生の開発したMRエラストマーは、方向によって免振効果を変化させることができる。右向きの揺れと左向きの揺れで、動く幅に20~30%の差をつけられるのだ。「例えば海沿いや崖の上、病院のそばなどの場合、揺れる方向を制御することで被害を最小限に抑えることができるでしょう」(田先生)。
 一方、先生の研究するSTFはダイラタンシー流体ともよばれる。通常は液体だが、大きな力を掛けると固体のようにふるまう物質だ。身近なところでは片栗粉と水を適当な割合で混ぜて作ることができる。大量のSTFの上ですばやく動けば、「水面を走る」ことも可能だ。先生はこれをモーターの回転ブレーキに使えないか研究中だ。STFをブレーキ内部に充填すれば、スピードが上がる、つまり力がかかるほどブレーキの効果を発揮する。ブレーキをかけるために別の力を新たに加える必要がなく、装置が単純になる可能性があるのだ。

先生の日課は、家に帰ると娘さんと遊ぶことだそうです。ゲームやパズル、おもちゃなどいろいろ楽しんでいるとのことです。また週末には家族でそろって映画を見に行くことが多いとのこと。最近見た中で一番感動した映画は、ディズニーアニメの「ズートピア」だそう。写真は娘さんとイオンモール名取のピュアハートキッズランドで遊んでいるところです。

田 瞳菲
Tongfei Tian
東北大学 流体科学研究所 助教
2005年に北京航空航天大学 機械工学科を卒業後、中国の機械工業出版社に入社。2008年にオーストラリアのウーロンゴン大学大学院 機械工学研究科に入学、2014年に博士号を取得。同年より同大学にてスマートマテリアルを研究、2015年より東北大学流体科学研究所の助教。
  • ●MRエラストマー
  • ●動的粘弾性
  • ●耐震保護
  • ●せん断増粘流体(STF)
  • ●レオロジー特性
  • ●回転ブレーキ