研究内容
極低温流固液二相流体に関する実験的研究
スラッシュ窒素の熱伝達特性と加熱時の流動特性に関する実験的研究
昨今,極低温流は宇宙工学,エネルギー工学,超伝導工学を始めとした様々な工学分野に利用されています。例えば,超伝導工学分野では,2001年に発見された金属系高温超伝導体MgB2(超伝導転移温度 Tc=39 K)は,液体水素による冷却が可能であり,加工性に優れ,クリーンエネルギー社会に適した超伝導材料として注目されています。
また,酸化物系高温超伝導体Bi2223(Tc=110K)を用いた機器が実現化できれば,液体水素よりも安価な液体窒素を冷媒として使用することも可能となります。
現在,開発が進められている高温超伝導材を使用した超伝導送電を実現するには,優れた冷媒が必要であります。
スラッシュ水素やスラッシュ窒素などの極低温スラッシュ流体は固体が全て溶けるまでの間,流体を融点付近に保つことができるため,優れた冷媒として期待されています。
さらに,冷媒としてスラッシュ水素を流動させることにより,電力だけでなく,水素も同時に輸送できるという,これからの水素エネルギー社会に向けたシステムが実現可能となると考えられています。
本研究室ではシステム実現に向け,極低温スラッシュの冷却能力と流動特性を把握するために,スラッシュ流体として比較的取り扱いが容易なスラッシュ窒素を用い,固相率や流速等を変化させ,熱伝達特性及び伝熱時の圧力損失に関して実験的研究を行っています。
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伝熱試験部の外観(拡大) | 伝熱試験部の模式図 |
過去の研究
スラッシュ窒素の熱流動特性の基礎実験を行った本研究室の過去の研究報告によると,以下の知見が得られています。

加熱時におけるスラッシュ窒素の圧力損失と局所熱伝達率は,同じ条件(流速3.6 m/s以上,初期固相率10-30 %)の下で,サブクール液体窒素時よりも顕著に減少し, スラッシュ窒素の圧力損失特性と熱伝達特性は,相関性があることが確認されている。またこの時,流れは擬均質流になることが高速度カメラによる可視化画像から確認されています。
また,伝熱試験部の区間において全ての固体粒子が融解していない場合は,スラッシュ窒素の熱伝達率がサブクール液体窒素の熱伝達率よりも軸方向に進むにつれて小さくなることが確認され,それに対して全ての固体粒子が融解した場合には、スラッシュ窒素の熱伝達率はサブクール液体窒素の熱伝達率に近づくことが確認されました。