事業概要

事業の目標

アンモニア燃焼と耐アンモニア材料の統合研究を行う「アンモニア燃焼・材料研究拠点」 構築とこれを社会実装に繋げる過程で実施する国際交流・若手育成

本事業で対象とする「燃焼学」「材料学」
そして両者を補完する「物性学」の要素分野

[燃焼領域]
アンモニア( 直接) 燃焼技術確立に向けた基礎燃焼研究の実施
[材料領域]
軽量・高強度かつ高温酸化・窒化耐性を有するアンモニア燃焼機器構成材料の開発
[物性領域]
アンモニア燃焼に関わる気液界面現象の解明

(写真)高温旋回空気流中に安定化された純アンモニア噴霧火炎

日本側拠点機関である東北大学 流体科学研究所が産総研福島再生可能エネルギー研究所、サウジアラビア・アブドラ王立科学技術大学と協力してアンモニア燃焼研究を推進するとともに、流体科学研究所が過去の拠点形成事業で確立した先端材料科学拠点(流体科学研究所、仏リヨン大学連合(金属材料学)、米ワシントン大学(高分子材料学)、台湾国立陽明交通大学)が耐アンモニア材料研究を担当、両者が協創する。

これらの共同研究を推進し、最終的に全てを統合した新たな学術分野の創成と社会実装を目指す。このためまず、日・サウジアラビア・仏・米・台の5カ国の研究者からなる国際学術コンソーシアムを創設する。コンソーシアムにおいては、流体科学研究所がアンモニア燃焼・材料研究のハブとなる。交流期間中、毎年セミナーを開催し、さらに若手研究者の発掘と育成のため、サマースクールを開催し、若手研究者の回遊研究、博士課程学生の国際共同大学院、卓越大学院を通した研究者交流を図る。これらの活動を通じ、アンモニア燃焼・材料技術の基礎学理から社会実装までをつなげる若手人材の育成を行う。さらにコンソーシアム内に上記5ヵ国の大学、企業、政府関係者からなる国際産学官拡大戦略委員会を設け、社会実装に向けた国際的な産学官共同研究と協創活動を推進することにより、自立的で継続的な国際研究交流拠点を形成する。

研究交流計画の概要

【ELyT School 2019 in Lyon】2019年8月26日~9月3日、フランスのINSA Lyon およびEcole Centrale de Lyon にて、ELyT School 2019 in Lyon を開催いたしました。あわせて31人の学生(東北大学18人、リヨン大学13人)が参加し、9日間一緒に講義を受講し、様々な討論や意見交換を行いました。

1) 共同研究

本事業では「アンモニア燃焼・材料研究拠点」構築に資する学術研究交流を行う。SIPエネルギーキャリア事業で既に強固に連携する東北大学と産総研福島にアブドラ王立科学技術大学が加わり、アンモニア燃焼研究を担当する。耐アンモニア材料研究は、既構築の材料研究拠点(東北大学・リヨン大学連合・ワシントン大学・陽明交通大学)に展開する。すなわち日・サウジアラビア・仏・米・台の5ヵ国が燃焼、材料、物性に跨がる学術研究を推進し、それらの多角的結果を結集し「アンモニア燃焼・材料研究拠点」を構築する。アンモニア燃焼で世界をリードする東北大学、燃焼反応解析で世界的実績のあるサウジアラビア、材料研究および機械学習に強みを持つ仏米機関が国際学術コンソーシアムを構成し、協創を通じて学術領域を融合することで顕著なシナジー効果がもたらされ、アンモニア燃焼・材料研究における世界最高水準の成果が期待できる。

2) セミナー

アンモニアに関する燃焼現象や材料との界面現象に関する学理構築、解析を行うため、上記国際学術コンソーシアムを通じた日本(仙台)セミナーを毎年開催する。また、若手研究者育成のため、本事業で行う研究内容の要素技術、複合課題について毎年1分野を選び、仙台、ツバル、リヨン、シアトル、新竹にてサマースクールを実施する。またCore to Core webinarを定期開催して世界に成果を発信し、研究者間の交流を図る。

3) 研究者交流

若手研究者が各拠点機関に年に数ヶ月ほど滞在し、アンモニア燃焼・耐アンモニア材料に関する共同研究を行う。また、サマースクールやワークショップを通じ、後進の若手研究者、大学院生の指導を行う。また、若手研究者が各拠点研究機関を回遊して海外研究者と協創することで若手研究者の育成を推進するとともに継続的な国際ネットワークを形成する。

実施体制概念図

従来、水素エネルギーキャリアの選択肢の1つに過ぎないと見られてきたアンモニアを、燃料として直接燃焼する新技術(理想的にはNOxを排出せず、水と窒素のみを生成する)の学術研究と社会実装を目指す。このため、①「アンモニア(直接)燃焼」では東北大学流体科学研究所・産総研福島・アブドラ王立科学技術大学(KAUST)からなる燃焼研究グループと、②「耐アンモニア材料」では既構築の材料研究拠点(流体研・仏リヨン大学連合・米ワシントン大学・台湾国立陽明交通大学)とが協創する、「アンモニア燃焼・材料研究拠点」を構築する。

アンモニア燃焼をとりまく社会環境

アンモニアを燃料として直接燃焼させるこの技術は、近年急速に世界的注目を集める代替燃料・低炭素化技術の切り札である。SIP事業サブテーマ(2019年度終了)を率いた流体科学研究所教員が、第二次大戦以降、長年にわたり解決不可能とされてきた2つの課題を解決(アンモニアの低燃焼性克服と窒素酸化物排出抑制燃焼法の開発)したことが世界的な認識転換に大きく貢献している。

スキームの特徴

アンモニア燃焼と耐アンモニア材料研究の融合、加えて基礎・応用研究両面で各大学を支える各国の有数の企業の連合からなる、世界で最も強力、かつユニークで継続的な若手研究者育成拠点・国際学術拠点の実現が期待される。