大林文庫 → ブクログ大林文庫に移動 (H23.4.22)

読んでおもしろかった本の紹介です。可能なものは研究室に置いておきますので、研究室室内で興味のある人は自由に読んでください。


2011年3月



  • 必要か、リニア新幹線   橋山礼治郎 著 岩波書店 2011年2月

    中央新幹線は必要としても、なぜ「リニア」なのか?高速化のために1県1駅と決 め,沿線地域への恩恵をなくし鉄道としての利点を捨てざるを得ないとしたら, それは必要か?単独で開発するほど会社が儲かっているなら,新幹線代を安くし て欲しいと思うのは、僕だけ?

  • 現代語訳学問のすすめ   福沢諭吉 著 (斎藤 孝 翻訳)  ちくま新書 2009 年2月

    志の高さを学ぼう!

    2011年2月



  • デフレの正体−経済は「人口の波」で動く   藻谷浩介 著 角川oneテーマ21  2010年6月

    [100年に一度の不況」ではなく「2000年に一度の現役減少」。日本はほぼ均一な 民衆からなり,一番の差異は,年収や学歴などではなく世代間に表れている。そ のことが,実は「人口」という指標で日本経済も支配していた。イノベーション も重要だけど,するべきことはほかにもある。

    2010年11月



  • 「ひらめき」の設計図   久米 是志 著 小学館 2006年6月

    赤裸々な失敗談から語り起こされる「創造」についての考察。「考える」とは何 か、解答はここにある。

  • 街場のメディア論   内田樹 著 光文社新書 2010年8月

    第一講でいきなりノックアウトされる(起)。就活は何のためにするのか、現在 の大学生は是非読んでみよう。そのあとメディア論から、教育論、著作権、本棚 と話は広がり(承)、「贈与論」の高みに至る(転)。(結)は自分でどうぞ。

    2010年10月



  • 微生物の狩人 上・下  ポール・ド・クライフ著 岩波文庫 1980年12月

    奥羽大学薬学部大島先生のご推薦。ともかくおもしろい。科学読み物というジャ ンルを切り開いた本ではないだろうか。いささか修飾過剰な文体だが、科学のわ くわく感が伝わる本。

    2010年7月



  • 日本辺境論   内田樹 著 新潮新書 2009年11月

    内田氏の本は何冊か読んでいるが,この本はよく売れているだけあって,目から ウロコの感がある。日本人は辺境人である。それが故に,「学ぶ力」を身につけ た。それは学びに自分を捨てること(そのことに先駆的に確信を持てること)で ある。若者よ,日本人たれ!

  • 技術屋の心眼   E.S.ファーガソン 著 平凡社ライブラリー 2009年4月

    技術者に必要なのは解析能力ではなくて「心眼」。工学教育に警鐘を鳴らす。 「成功した新しい設計では,学校で会得した知識と経験が結びついており,必然 性よりも判断の結果の方が多く含まれている。」「コンピュータ支援設計がうま く行くためには,...視覚的な知識と適合性に対する直感的な感覚が必要であ る。」見える化の重要性がここにも。

    2010年6月



  • 読み」の整理学   外山滋比古 著 ちくま文庫 2007年10月

    JAXA泉氏の紹介。「読む」という行為を通じて,学問を説く。「わかっている ことはおもしろい」スポーツ新聞を読むたとえはわかりやすい。しかし,学問は 「未知を読む」ことである。おもしろくない。  研究所のセミナーでも分野外の話を聞きたがらない学生が多い。分からなくて 当然,おもしろくなくて当然。その壁を乗り越えてこそ,学問が広がっていくの である。  この本の原著は1981年刊。ゆとり教育の振り子が戻ってきた最近,この本が売 れるのももっともだ。

    2010年5月



  • 夢を翔んだ翼 ボイジャー―無給油無着陸の世界一周機   樋口敬二 著 酣燈社 2010年4月

    航空機も環境適合性の時代。あえて高速化せずに徹底的な軽量化をはかり,飛行 には緻密な気象のモニタリングにより最適な経路を選択し,究極の記録を作った 飛行機ボイジャーに、これからの航空機のヒントがあるのでは?

    2010年4月



  • 創るセンス 工作の思考   森博嗣 著 集英社

    2010年3月28日朝日新聞掲載の瀬名秀明先生の書評に惹かれて購入。まえがきか らはまる。いわく、「簡単に結論を書いてしまえば、「うまくいかないことが問 題」なのではなく、「うまくいかないことが普通」なのだ。」第2章では「持っ て生まれたセンスの大部分は、「想像力」である。」工学部の学生諸君には是非 読んで欲しい本。

    2010年3月



  • 科学哲学者 柏木達彦のプラトン講義   冨田 恭彦著 角川ソフィア文庫 

    シリーズで出ていていずれもおもしろいが、アトランティス編は白眉。参考文献 の「古代人の宇宙」まで読んでしまった。

  • Proust and the Squid: The Story and Science of the Reading Brain  By Maryanne Wolf

    読む能力は遺伝的に獲得したものではなかった!脳科学が明かす最新の知見に興 奮。子供にはいっぱい話しかけてあげよう。翻訳も出ているが原書を読了。

    2010年1月



  • ずるい!?なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか  青木高夫著 ディスカバー携書 2009年12月

    世界での戦いは"ルール作り"からはじまる。ルール作りの場に参画しよう!

    2009年12月



  • 笑う科学イグ・ノーベル賞  志村幸雄著 PHPサイエンス・ワールド新書 2009年11月

    「役に立つ」、「経済効果」、「イノベーション」、「事業仕分け」。不自由な科 学技術へのアンチテーゼ。

    2009年11月



  • 「結果を出す人」はノートに何を書いているのか  美崎栄一郎著 Nanaブックス2009年9月

    「記録」にはまる。なぜ記録が重要か?この本の「はじめに」は非常に良く書か れている。「仕事をきちんと『記録』して、経験を貯金」する。仕事術の原点に 触れた思いがする。

  • 大事なことはすべて記録しなさい  鹿田尚樹著 ダイアモンド社 2009年11月

    記録は重要と分かっているけど、ついついサボっていないか?この本を読んで記 録へのモチベーションを上げよう!

    2009年8月



  • 慢性疲労は首で直せる!  松井孝嘉著 角川oneテーマ21 2009年1月

    1日パソコンに向き合っているすべての人へお勧め。この病院に行きたい!(で も、パソコン持ち込み禁止なので入院はできなさそう。)とりあえず15分タイ マーをデスクトップに配置。15分に一度休憩しよう!


  • 整理HACKS!―1分でスッキリする整理のコツと習慣  小山 龍介著 東洋経済新報社 2009年6月

    なるほど(役に立ちそう)!と、フンフン(これは知ってるぞ)のテクニックがあ るが、一番参考になるのは考え方。思考ハックだけでも読む価値がある。


    2009年7月



  • わかりやすく〈伝える〉技術  池上 彰著 講談社現代新書 2009年7月

    話しも「見える化」だ。実践的技術にあふれる。話しにはリードをつける/わかりやすいキーワードはつかみに使える/最後に冒頭のつかみに戻る/マジックワードもある(大変なんです・つまり・言い換えればをいったん入れて短い文章 を作り、最後に取り除く!)。



    2009年6月



  • 仕事の見える化  長尾一洋著 中経出版 2009年4月

    「見える化」本、第2弾。これで研究活動も「見える化」だ。


  • 血税空港  森功著 東洋経済新報社 2009年5月

    帯に刺激的な言葉が並ぶ。「空整特会」も「見える化」が必要みたい。


  • 見える化  遠藤功著 東洋経済新報社 2005年10月

    「見える化」は奥深い。「見える化」の4つの落とし穴:IT偏重、数値偏重、生 産偏重(間接部門軽視)、仕組み偏重。「見える化」が育む4つのもの:気づき、 思考、対話、行動。大学は「評価」ばやりだが、「評価」=「見える化」と置き 換えると、その落とし穴と育むべきものが分かるのでは。



    2009年5月



  • お金の教養 みんなが知らないお金の「仕組み」  泉正人著 大和書房 2008年10月

    なんとなく月々の収入と支出がバランスしていればOKと思っていないか?個人の 財務諸表を作り、将来を俯瞰する「お金」の見方を指南している。必須の教養。


  • 財務3表一体理解法 決算書がスラスラわかる 國貞克則著 朝日新書 2007年5月

    理解不能だった学会の財務書類がすっきり!上の本とあわせて「お金」の基本を 理解しよう。ちなみに筆者は東北大工学部卒。


  • 人生は勉強より「世渡り力」だ!  岡野雅行著 青春新書 2008年6月

    脳で汗をかかなきゃ何もできない!「考える時間が一番楽しい」と言い切る著者 に感銘を受ける。


    2009年4月



  • 「筋のよい答え」の見つけ方 堀切川式・因果短縮思考法  堀切川一男著 グラフ 社 2009年4月

    この本を読んで「強い頭」を鍛えよう!「地頭力を鍛える」をセットで読みたい。東北大生必読。


  • 勝負脳〉の鍛え方  林成之著 講談社現代新書 2006年10月

    ちょっと流行に後れているが読了。科学的に実証されているとはいいかねるが、 経験に裏打ちされた持論が展開され、非常に納得できる内容。イメージ記憶の話 はマインドマップの活用にもつながる。


  • 紙とネットのハイブリッド仕事術  ビジネススキル向上委員会著 ソフトバンク 新書 2009年3月

    役立つ小ネタ満載。巻末の参考図書も楽しい。


  • 究極の会議  鈴木健著 ソフトバンククリエイティブ 2007年9月

    「紙とネットのハイブリッド仕事術」で推薦されている本。会議のアウトプットを重視。この本を読んで自らを省みると、議題や前回議事録が会議当日に示されたり、会議室に行かないと何をするのか分からないような会議ばかり。目的と結論のある会議を開こう。


    2009年2月



  • 体が若返る10の生活習慣  中野ジェームズ修一著 ソフトバンク新書 2008年12月

    「筋肉が1キロ減ると、1年で脂肪が2.5キロもつく」 「常に動かしている筋肉は 柔らかく、動かしていない筋肉は固くなる」 階段は歩こう、肩胛骨と骨盤を動 かそう、ストレッチをしよう。バランスボールに挑戦したい人は僕の部屋までど うぞ。


    2009年1月



  • 金融大崩壊 「アメリカ金融帝国」の終焉  水野和夫著 NHK出版生活人新書 2008年12月

    サブプライムローン問題に発した「すべてのお金はウォール街に通ずる」「アメ リカ金融帝国」の終焉で、アダム・スミス以来の経済成長が国民を豊かにする資 本主義の時代はついに終わったのか。400年を見通して世界の現状と行く末を分 かりやすく論じている。この社会情勢の中で学会はこれまで通りの活動を続けて いて良いのかと問題提起された方がいらしたが、全く同感。あらゆる分野の人に この危機意識を共有して欲しい。


  • 宇宙のエンドゲーム 誕生から終焉までの銀河の歴史  アダムズ&ラフリン著 ち くま学術文庫 2008年4月

    最新の宇宙論に基づき、宇宙の行く末を科学的に予想する、学問の楽しみを尽く したような本。


  • はじめてのGTD ストレスフリーの整理術  デビッド・アレン著 二見書房 2009年1月

    David Allen氏の「Getting Things Done」の新訳。英語で読んだけど、仕事術は この本に尽きる。特にメールの整理術に応用しよう。

    2008年9月



  • ストレスフリーの仕事術  デビット・アレン著 二見書房 2006年6月

    丸田先生の紹介でGTDに遭遇。これはすごい。1日でストレスフリーに!仕事術に は日本語版解説と5章を読むべし。あとは随想。しかし、法則25「無我の境地」 に感銘。アレン氏はすでに悟りを開いている。

    2008年8月



  • デッドライン仕事術  吉越浩一郎 祥伝社新書 2007年12月

    定時に帰ろう!(帰りたい!!)本当の「トップダウン」とは何かなど、リーダー シップの本質に迫る。会議の正しいやり方も興味深い。この本をきっかけに仕事術にはまる。

  • 大学「法人化」以後 競争激化と格差の拡大   中井浩一 中公新書ラクレ 2008年8月

    法人化後の混乱とそれに立ち向かう人々。まだ闘いは続く。(それにしても堀切川先生はすごい!)

    2008年7月



  • 古代文明と気候大変動 人類の運命を変えた二万年史  B.フェイガン 河出文庫 2008年6月

    ツンドラ地帯やサハラ砂漠は呼吸している!気候変化に伴い、人を吸い込んでは 吐き出し、そのポンプ作用が人類をアメリカ大陸に送り込み、古代エジプト文明 を花開かせた。アメリカ大陸にあった古代湖の崩壊が寒冷化と干ばつを引き起こ し、農耕を広めた。 一方で、気候変化や干ばつはいくつもの古代文明を崩壊させた。数百年から一千 年単位での気候変動と、人類文明への影響を語り、現代社会の行く末に警鐘を鳴 らす。

    2008年5月



  • アダム・スミス  堂目卓生 中公新書 2008年3月

    アダム・スミスといえば「見えざる手」。しかしこの言葉は「諸国民の冨」には1回しか出てこない。「富」といえば金銀と思われていた時代に、 必需品や便益品といった物質的富を「富」と定義し、その源泉は労働にあるとした。そして労働生産性が上がり、経済成長することによって 国民が豊かになることを見出し、自由で「公正な」市場が経済成長をもたらすとした。「見えざる手」は無条件に働かない。 その前提条件に注目した良書。

    2008年4月



  • アラブの大富豪  前田高行 新潮新書 2008年2月

    この本は大富豪を題材に、アラブの経済と政治・宗教との関わりを概説してくれる。オイルマネーが世界を席巻する今、最もタイムリーな本かも。A380を個人で買ったアルワリード王子とは?知りたい人はこの本を読んでみよう。

    2008年3月



  • 地頭力を鍛える  細谷功 東洋経済新報社 2007年12月

    「フェルミ推定」という副題に惹かれて購入。これぞ研究者に必要な能力。論文が書けない学生にとっての課題図書。仮説思考力、フレームワーク思考力(切り口が重要)、抽象化思考力、の3つの力で自分の研究を見直してみよう!

    2008年2月


  • ニッポンの大学  小林哲夫 講談社現代新書 2007年12月

    思い込みを避けてデータに語らせることは難しいが、それが実現しているようだ。筆者の考えるランキングとは、総合順位ではなく、多様性の指標であることがよく分かる。

    2008年1月


  • ものづくり革命 -パーソナル・ファブリケーションの夜明け-  ニール・ガーシェンフェルド ソフトバンククリエイティブ 2006年2月

    著者のSC'07の招待講演を聞き興味を持ったので読んでみた。時間の限られた講演では十分伝わらなかったもっと大きなインパクトを持っている。Wiiがヒットしたように、 仮想現実の先には現実とのインタラクションがある。これぞ次世代のイノベーション技術。

  • 2007年10月


  • 失敗は予測できる  中尾 政之 光文社新書 2007年8月

    失敗学を実践しよう。物事の考え方が分かる本。「失敗百選」のエッセンスが詰 まっている。「組織行動の「まずい!!学」」とあわせて読めば楽しさ倍増。非正 規社員の問題も、座視できない。

  • 最高学府はバカだらけ    石渡 嶺司 著 光文社文庫 2007年9月

    笑えない現実がすぐそこに。まずは各章のまとめだけでも立ち読みを勧める。購 買意欲をそそられることは必須。はみ出し大学情報も楽しい。大学の情報公開に 関する問題は必読。また、大学教員の多忙に由来して非常勤職員の比重は高まる ばかりだが、その待遇問題も取り上げて欲しい。

  • なぜモチベーションが上がらないのか 児玉光雄 ソフトバンク新書 2006年3月

    自分のために仕事があるのではない、単純作業を楽しむ、自信は結果から生まれ るものではない、プレッシャーと向き合う、ビジョンと目標は違う、仕事に優先 順位をつける等々、優れた人生指南書。また、自分のモチベーションは高くて も、人の上に立つことが多くなったら読んでおきたい本。

  • 組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか 樋口 晴彦 祥伝 社新書 2006年6月
  • 「まずい!!」学―組織はこうしてウソをつく 樋口 晴彦 祥伝 社新書 2006年7月

    2冊一気に通読。マネジメントの失敗学。1冊目は事例豊富、2冊目は随筆風で、 どちらも味わいがある。民営化・外注・効率化・成果主義、失敗学から見ると大 きな陥穽がある。2冊目の沖縄集団自決事件は期せずしてタイムリー。「禁じ 手」もインパクトあり。

    2007年9月


  • 渋滞学 西成活裕 新潮選書 2006年9月

    圧縮性流体を学んだものなら、渋滞が衝撃波あることは常識。しかし、この本では「自己駆動粒子系」としてさまざまなモデル化が考えられている。その上、自 然渋滞実験まで実施。「世界は渋滞だらけ」「渋滞学のこれから」も楽しい。シミュレーション科学に興味がある人、携わる人、志す人、是非読んでみよう。

  • 下流社会第2章 なぜ男は女に“負けた”のか 三浦 展 光文社新書 2007年9月

    相変わらずデータに裏打ちされた警句満載の書。特に「下流ほど年を取っても自分を探し続ける」「自分探しは作られたブームである」は印象的。「バカの壁」 をあわせて読もう。変わらない「自分」など幻想に過ぎない。むしろ日々変わっていく自分こそが大切だ。ついでに「男にすがらせない女」も衝撃的。男と女は いつの時代も相容れないものか。。。

    2007年7月


  • 論文捏造  村松秀 中公新書ラクレ 2006年9月

    夏に読むと寒くなる。終わりの方に『「再現性」の幻想』という項があるが、大規模シミュレーションにも同じことがいえる。我々のやっている計算の再現など 普通はとてもできない。我々の研究の正しさと価値を担保するのは、我々自身の倫理観しかない。

  • 生物と無生物のあいだ  福岡伸一 講談社現代新書 2007年5月

    日本の科学解説書もここまで来たかという感慨をいだかせる良質の読み物.科学者たちの人間ドラマと,何が科学の歴史に重要だったかを明快に説明する論旨. 生物と無生物のあいだを見つめ,遺伝子=設計図の誤解を解く.

    2007年6月


  • スーパーコンピューターを20万円で創る  伊藤智義 集英社新書 2007年6月

    この世界ではもちろん有名なGRAPE、その開発者自ら草創の歴史を語る、これは読んでみるしかあるまい。しかも、おもしろい。漫画原作者としての筆者の異色 の経歴が役立っているのであろう。ただし、開発メンバーの一人が航空学科に進んでも飛行機は作れないと天文学を選ぶくだりがあるが、時代は変わっている。 20年の流れを実感。

    2007年5月


  • 失敗百選  中尾政之 森北出版 2005年10月

    失敗や事故の例は覚えきれないほどあるのに,実は死蔵していないだろうか?それはなぜか,データを活かすにはどうしたらよいか, その考え方がじっくり書かれた「必読の書」.まえがきで「日本の設計教育に足りないのは,product definition(製品の定義)である」 「こんどこそ!わかる数学」でも定義の重要性が書かれていた.実は定義の問題は「日本の教育」にもっとも欠けているものかもしれない.まずはこの本を読んでみよう!

  • 眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く  アンドリュー・パーカー 草思社 2006年3月 

    子供の頃,三葉虫の化石のレプリカを持っていた.カンブリア紀の爆発についてはは1990年代に「ワンダフル・ライフ」を始め,何冊も読んだ. この2つにこんな関係があったとは!知るは喜びなり!!

    2007年4月


  • 食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字<上> 山田真哉著 光文社 新書 2007年4月

    「数字がうまくなる」ことを説く。「数に強くなる」と同じことである。バックグラウンドも年齢も全く異なる畑村氏と、 全く異なる例を引きつつ同じことが主張されていることに感銘。あらためて新井氏の本と比べると、「数学」って本当に特殊な世界だ。

  • 安全・快適エアラインはこれだ 藤石金彌 朝日新書 2007年4月

    本としてはいささかとりとめがないが、最新データ満載。エアライン・ランキングの見方がよく分かる。 格安航空会社の仕組み、それを選ぶ利用客の心理。あなたも値段だけ見て航空券を買っていませんか。

    2007年3月


  • 数に強くなる 畑村洋太郎著 岩波新書 2007年2月

    教養としての「読み書きソロバン」、その基本としての「ソロバン」の考え方を説く。工学的発想にあふれた「数」のとらえ方を是非参考にして欲しい。 蛇足もまた楽しい。

  • こんどこそ!わかる数学 新井 紀子著 岩波書店 2007年2月

    朝日新聞の書評欄に出ていた筆者のインタビューに感動。曰く、単に数学の美しさを味わうためなら授業時間数なんて美術と同じでいい。それ以上の重要さがあ るから数学を学ぶ必要がある。ではその重要さとは?筆者は、「定義」に基づく論理性を強調。牛乳パックの話にちょっと感動。なお筆者は同時期に、「生き抜 くための数学入門」を出しているが、こちらは軽いのりの書き方なのに、内容は大学レベル。


    2006年9月


  • 昆虫−驚異の微小脳水波誠著 中公新書 2006年8月

    ハエには人の動きがスローモーションで見える!しかも、昆虫の目は複眼とばかり思っていたら、単眼もある。では何のため?さらに、昆虫も学習できる!!ま たに驚異。著者略歴を見て、東北大にもこんな先生がいらしたのかとまた驚く。

  • 地震と火山の島国島村英紀著 岩波ジュニア新書 2001年3月

    アイスランドから帰国して、初めて本屋に行ったときに発見。アイスランドの紹介本だが、地球物理学者が書いているところがミソ。またアイスランドに行きた くなる!


    2006年8月


  • 科学者という仕事酒井邦嘉 中公新書 2006年4月

    研究者という職業をかいま見るのは優れた入門書。いささか理想論に走りすぎているかもしれないが、何となく大学院に進学する気になった学生には是非読んで みてもらいたい。


    2006年7月


  • イノベーションのジレンマ − 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき クレイトン・クリステンセン著 翔永社 2006年5月 (初版2001年7月)

    出版以来、一世を風靡したといって良いだろう。技術革新のイノベーションには持続的技術と破壊的技術があることを指摘。その続々編「明日は誰のものか イ ノベーションの最終解」では、具体例として航空業界が取り上げられており示唆に富んでいる。ホンダジェットこそ日本が必要とする破壊のイノベーションか。

  • アメリカの宇宙戦略 明石和泰 岩波新書 2006年6月

    宇宙を通してみるアメリカの姿。技術的な研究開発ではなく、政治外交上の宇宙を論じた本。国防戦略の変遷と国際社会の変化。レーガンの理想とブッシュの限界。読み応えあり。


    2006年5月


  • 飛行機物語−羽ばたき機からジェット旅客機まで 鈴木真二著 中公新書 2003年4月

    飛行の原理から現在飛んでいる飛行機ができるまでを丁寧にひもといた良書。飛行機がなぜ飛ぶのか不思議な人は一度この本を読んでみよう。最近、「飛行機はなぜ飛ぶのか? 科学では説明できない!」というキャッチコピーの本が売れているが、その著者はきっとこの本を知らなかったのだろう。


    2006年4月


  • 失われた10年」は乗り越えられたか−日本的経営の再検証 下川浩一著 中公新書 2006年4月

    バブルから今に至る日本の産業界を俯瞰する優れた解説書。「能力構築競争−日本の自動車産業はなぜ強いのか」藤本隆宏著中公新書とあわせて読もう。 安易なグローバリズム・「リストラ」「海外移転」「選択と集中」が自分の首を絞めていないか?

  • 科学の未来  フリーマン・ダイソン みすず書房 2006年1月

    瀬名特任教授の就任記念講演で興味を持ち購入。飛行機vs飛行船で、失敗を繰り返した飛行機が実は進歩して生き残り、国家の威信をかけて開発された飛行船が失敗に終わった話。 スーパーコライダーに象徴されるビッグサイエンスが終わりを告げ、デジタル革命によるコストダウンがサイエンスにも革命をもたらしている指摘。第3期科学技術基本計画が始動しはじめた今、 まさに読むべき本。

  • 技術にも品質がある −品質工学が生む革新的技術開発力 長谷部光雄  日本規格協会 2006年2月

    技術者としての誇りを踏まえた品質工学の考え方に感服。工学部生の必読の書。

  • ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 三浦 展  新書y(洋泉社) 2004年9月

    「下流社会」ほどフレーズは光っていないが、書かれている内容はホラー小説より恐ろしい。最近、続編「脱ファスト風土宣言―商店街を救え!」が出たようである。


  • 巨人軍論−組織とは、人間とは、伝統とは 野村克也 角川ONEテーマ21

    「人間教育」の重要性。実はトヨタ本も、ドラッカー本も、根本は一緒。野村氏もドラッカーを読んでいるのか、興味のあるところだ。


  • 空間の謎・時間の謎−宇宙の始まりに迫る物理学と哲学 内井惣七 中公新書

    世界物理年2005を記念して出版されたのか、とても新書とは思えないテーマと内容を持つ重厚な本。ハイレベルな味わいがある。


  • 論争する宇宙−「アインシュタイン最大の失敗」が甦る 吉井譲 集英社新書

    20世紀宇宙論の流れが手際よくまとめられ、現在の最先端の天文学が分かる。第7章の科研費苦労話には大いに共感!


    2006年3月

  • 日本の科学/技術はどこへいくのか 中島秀人 岩波書店 2006年1月

    本書の第1部は抜群におもしろいが、第2部は著者自身が認めるように「内容が端緒に過ぎない」のでお金を払って本を買う身としてはいささか不満(『イリュー ム』を仙台でも配布してください)。第2部はさておき、第1部で早速ふれられる科学研究の変容と我々自身が持つ「古典的科学者像」のずれ。これが冷戦の産物 であったとはなんたる皮肉。著者には、是非NASAの誕生とその役割、あるいはその将来に科学技術社会論のメスを入れてほしい。それはとりもなおさず、JAXAの 将来を占うことになろう。


    2006年1月

  • なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか 若松義人 PHP新書 2006年1月

    改革も現場の人次第。人材育成こそ重要である。教育研究の現場でも改革が要求されているが、まずはこの本の一読を勧める。改革を進めるのは職務権限ではな い、説得と信頼が必要。考えることを部下に丸投げしてはいけない。失敗を通じて学ぶのは、失敗した当人だけでなく、組織全体である。自前にこだわれ、自分 たちで考え、自分たちでつくり出すという当事者意識を忘れてはいけない。「かけ声倒れ」防止法とは。我々に必要な答えがここにある。


  • ザ・サーチ グーグルが世界を変えた ジョン・バッテル 日経BP社 2005年11月

    Supercomputing'05でYahooのデータマイニングの話がおもしろかったが、それも 検索ビジネスだそうだ。みんながインターネット上で「検索」をすることで、今 何が起きているのか?ネットなしに現代文明を語ることはできないし、ネットは 「検索」によって大きな変容を遂げつつある。この本は、グーグル誕生前から、 グーグルの現在、そしてネットの将来像までを描くことで、現在進行中の現代文 明の変容を見事に描ききっている。

    2005年12月

  • 使える!確率的思考 小島 寛之  ちくま新書 2005年11月
    169ページからの働きアリと怠けアリのモデルに感銘。「組織戦略の考え方」にある組織の中のフリーライダーとあわせて読みたい。

    2005年11月

  • 下流社会 新たな階層集団の出現 三浦展 光文社新書
    データにもとづく現代社会の分析。フレーズが刺激的。「『下流』の男性はひきこもり、女性は歌って踊る」「上流は社交的、下流はだらしない」「自分流は下 流」「女性の必勝パターン」上昇するためのポイントはコミュニケーション力。生活習慣を改めて、社交的に生きよう。

    2005年10月

  • 崖っぷち弱小大学物語 杉山幸丸 中公新書ラクレ
    「進化しすぎた日本人」がおもしろかったので、もう一冊読んでみた。この本のタイトルにだまされてはいけない。今日の我が国の大学教育の現実を暴き出した 出色の本である。この本で指摘されていることは決して「弱小」大学に限らない。もはや我が国に競争のない静謐なキャンパスはあり得ないことを確認する意 味で、是非読んでもらいたい本。


  • 進化しすぎた日本人 杉山幸丸 中公新書ラクレ
    コミュニケーションのとれない人間はサル以下?霊長類の脳を発達されてきたのは、集団生活にもとづく個体間交渉、すなわちコミュニケーション能力だそう だ。自立・社会性・知能・心、すべてはコミュニケーション能力と密接に関わっている。ヒトは1000〜2500人のサイズで顔を覚え、125〜200人と親密なつきあい が可能だそうだ。「『ここまでは広げられる能を持っているのだ』と信じて」、コミュニケーションを広げよう。

    2005年9月

  • 決断力 羽生善治 角川Oneテーマ21 
    羽生九段にこのような本を執筆させるのも企画の勝利か。羽生九段は、将棋棋士であると同時に、将棋研究者であることがよくわかる。学生諸君には、研究者と しての生き方を是非見習ってほしい。「才能とは、継続できる情熱である。」

    2005年7月

  • 素数ゼミの謎 吉村仁 文藝春秋 
    素数と最小公倍数が謎を解く。「世にも美しい数学入門」の対極を行く、素数ゼミに隠された、これぞ美しい数学構造の実例。もっとマスコミでも取り上げても らいたい本。

    2005年6月

  • 始祖鳥記 飯嶋和一 小学館文庫
    あまりにも時代に先駆けて空を飛んだ鳥人幸吉の生涯と、公儀をバックに市場支配とたくらむ江戸商人と自由な通商を求める諸国廻船の軋轢が、一つの物語に絡 み合う出色の小説。せめて幸吉の設計図なりと残っていれば、世界の航空史を塗り変えられただろうに、残念。



  • さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 山田 真哉 光文社新書
    会計の視点から経営のエッセンスを学べる優れた本。技術者たるもの、最低限この程度の企業経営の基礎を押さえておこう。企業は存続しなければならない (ゴーイング・コンサーン)から、連結決算のススメ、在庫は悪、機会損失まで、航空機を製造するにもこれらのセンスは重要。研究生活にも応用してみよ う。また、堅苦しいトピックを身近な視点に引き戻せる著者の力量に感服。

    2005年5月

  •  世にも美しい数学入門 藤原正彦・小川洋子 ちくまプリマー新書
             純粋数学を賛美する対談集。数学者の健気さが縦横無尽に発揮され、わがままもここまで極めれば爽快。第2部4章にある藤原氏の発言に注目「図形化する、視 覚化するということが数学の発展では重要です。理解とか発見には視覚化というか、イメージがしばしば必要です。」 しかし、あとがきの発言は?「学校の数学では基本概念を理解し、それを用い て問題を素早く解く、ということがもっとも重視され、数学の美しさを観照するまでは通常至らない。」美と感動が重要というなら、それを教育の現場で伝えな ければ。それを伝えるカリキュラムと教員の養成を本気で考えてほしい。 日本の数学の教科書では、数学の式の展開ばかりが続く。しかし、海外の教科 書には、豊富な事例を含むものもある(たとえばローレス・アントン「やさしい線型代数のの応用」、ストラング「線形代数とその応用」)。現実の問題解決と その背後にある数学の構造に気づくことも感動の一つではなかろうか?でも「博士の愛した数式」小川洋子著は手放しで讃えたい。

    2005年3月

  •  環境考古学への招待−発掘からわかる食・トイレ・戦争− 松井章 岩波新書
             もともと本を書くなんて思いこみの激しい人にしかできないと思っていたけど、この本もそう。それはそれとして、「へー」の連発。「乾燥遺跡から出土した糞 石を三リン酸ナトリウムの0.5%溶液に一晩浸しておくと軟化し、さらに臭いまで蘇る」でも日本では不幸にして(?)湿度が多く、この方法は使えないとか。 家畜の話や歯ブラシの話もおもしろい。ちなみに著者は東北大の卒業生。

    2005年2月

  •  進化しすぎた脳 中高生と語る[大脳生理学]の最前線 池谷祐二 朝日出版社
             『「見る」ことは無意識』に思わずナットク。網膜は100万画素、しかも色を識別する色細胞は中心付近にしかない。デジカメでいうと、画像はギザギザ、しか も中心以外は白黒!カラーのなめらかな画像が見えている(と思っている)のはすべて脳の処理のおかげ。ネイチャー・サイエンスの最新論文まで取り上げて中 高生と語れる(一般の教養レベルで話せる)のは著者の才能としかいいようがない。付論もまた楽しい。ただし、webの正誤表は必読のこと。


  •  科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法を探る  戸田山和久 NHKブックス
             NHKの経営陣はお粗末だけど、なぜか出版業には力が入っている?先月に引き続きNHKブックスより。著者には昨年のシンポでお会いしたので親しみがわき購 入。これだけ難しい問題をわかりやすく書くのはすごく勇気がいることだと思う。我々は論文を書くのが重要な仕事。仮説を立て解析・実験をし考察して結論 を導く。しかし、きちんと「説明」しているだろうか?本書を読んで、「科学的説明」についてじっくり考えながら仕事をしよう!

    2005年1月

  •  人間の本性を考える (上中下) 心は「空白の石版」か スティーブン・ピンカー NHKブックス
             著者の博覧強記に引きずり回され、ともかく読みづらい本。問題は、それでもその主張がおもしろいこと。さらに、暴力・性・子育てなど感情的な議論の対立を 呼びやすい問題に、大学人が自分の立場をストレートに主張していることに敬服する。人間の脳は無限の可能性を持っていて、小さい頃からがんばればどんなことでもできると、何となく思っていないだろうか?子供の脳は高い機能を備えて生まれてくる。子供を思い通りに育てるなんて実は不可能!ということがよくわ かる。

  •  Success and Challenges in Transforming National-Security Space, Dr. William F. Ballhaus Jr. AIAA Paper 2005-0002
             アメリカ航空宇宙学会43rd Aerospace Sciences Meetingにおける特別講演の資料。ともかくおもしろいので是非一読を。一般には手に入れにくいが学術論文と もいえないので、ここで紹介する。宇宙は身近だ。アメリカでは「テレビで雲の動きが見られるのに、何で気象衛星がいるんだ?」と、NASAの長官に質問した政治家がいたそうだ。しかし1990年 代、アメリカにおいてすら度重なる打ち上げ失敗で宇宙ビジネスの芽をつぶしてしまった。その宇宙政策の失敗を米国全体の問題として分析している。下にある スペースシャトル事故もその範疇にあるといって良いだろう。その政策とは民活とコスト削減である。ロケット打ち上げには大勢の努力を結集する必要がある。 しかし、そのうちの一人でもミスをしてそれが見つからないとき、すべては無に帰すことになる。コスト削減より、打ち上げ成功がまず大事。そのために、自分 が乗るつもりで試験せよ。個人から組織まで切れ目のない説明責任能力を持つ。失敗に学べ。こう書くと当たり前だが、コスト削減に目を奪われると、当たり前 のことができなくなる。NASAの有名なFaster, Better, Cheaperも一刀両断!

    2004年12月

  •  プロパテント・ウォーズ −国際特許戦争の舞台裏 上山明博 文春新書 2000年5月
             特許制度は古代ローマに芽生え、ルネッサンス時代にヴェネチア共和国で法制化され、アメリカでは憲法に謳われた基本的人権の一つ。1980年代にアメリカが仕 掛けた特許重視政策は今や世界中を巻き込んでいる。工学の関係者に手頃な副読本。この本の出版以降の新情報も欲しいところ。

    2004年10月

  •  世界の大学危機 潮木守一 中公新書 2004年9月 
             世界の大学の歴史的発展の経緯と社会との関わり。その中で今大学に問われているものは何か。大学人必読の書。これだけのことがわかっていれば、国立大学 横一線の独法化はなかったのではないだろうか?

    2004年8月

  •  流れのふしぎ 遊んでわかる流体力学のABC 日本機械学会編 講談社(ブルーバックス) 2004年8月
             子供でもできる流体の実験から、現象に隠された流体力学の知識まで、文句なくおもしろい。執筆者の石綿先生、根本先生に敬意を表します。揚力の説明はいつも話題になるところだが、流線曲率の定理があげられている(原典は今井先生がロゲルギストとして書いた「続物理の散歩道」(岩波1964)による)。この本にはベルヌーイの定理による説明は適切でないとあるが、詳しくいうとベルヌーイの定理による説明には2通りあり、エネルギー保存則と組み合わせたものは正解、翼の後縁で流れが閉じる時に上面と下面に分かれた流体粒子が同時に合流するとあるのは間違い。この間違いバージョンは、飛行機の飛ぶ仕組みとして某航空会社のパンフレットにも載っている有名な例。


  •  衝撃のスペースシャトル事故調査報告 NASAは組織文化を変えられるか 澤岡昭 中央労働災害防止協会(中災防新書) 2004年7月
             コロンビア号事故調査報告書を中心にNASAの組織としてのあり方を問いかける。「やればできる」という精神の陥穽。チャレンジ精神と危機管理は両立するのか、その答 えはここにはないが、航空宇宙に携わるものとして我々も問い続けなければならない問題を提起している。

    2004年7月

  •  進化経済学のすすめ 「知識」から経済現象を読む 江頭進 講談社現代新書 2002年6月
            経済、社会制度、産業活動、知識、グローバライゼーション、極端な市場原理はもの作り文化をも崩壊させる。プロローグのイギリスのティーカップの話が印象的。ブッ クオフで100円で買ったんだけど、100円で味わっては申し訳ないようなおもしろさ。ちなみに進化経済学のモデルによると、大学はベンチャーをするのではなく、あくまで採算を度外視して技術開発を行い、その成果を営利企業に教えなければ意味がないそうだ。


  •  パースの認識論 ウイリアム H. デイヴィス(赤木昭夫訳)産業図書 平成2年11月
            「推論」とは何か、デカルトの対立者としてのパースの考え方は、西洋哲学のルーツのように教わったデカルトの考え方に比べ、はるかに魅力的だ。不完全な知識からの 推論(アブダクション)の話は設計とも密接な関連を持ち、「問題解決のための「社会技術」」でも触れられている。ただし、この本は専門用語(おそらく哲学関係)も多くやや読みづらい。


  • 2004年6月

  •  天才数学者はこう解いた、こう生きた 方程式四千年の歴史 木村俊一 講談社選書メチエ 2003年6月
            方程式をめぐる歴史の薀蓄。作図で解ける2次方程式(ユークリッドの原論)、マイナス×マイナスはマイナス?、迷走する合理主義(デカルト)、対称性の発見 (ニュートン)など、話題に事欠かない。囲みの中の数学的説明は腰を据えて読まないと追えないほど高度。これぞ知的愉悦。


  • 2004年5月

  •  自助論−人生を最高に生き抜く知恵 スマイルズ(竹内均訳) 三笠書房(知的生きかた文庫) 1988年3月
           「天は自ら助くる者を助く」このあまりに有名な格言とともに始まる「不朽の人生論」。原著は150年も前の本。日本でも明治時代に翻訳され当時で100万 部売れたといわれる。その新訳がなんと竹内均氏によって刊行されていた。若者への助言はいつの世も「不朽」。 この本は、理工系の学生・研究者もおススメ。ニュートン・ファラデー・ワットなど科学者の逸話が豊富。「立派な成果を生むのは器具の 善し悪しではなく、その人自身の熟練した技術と粘り強さなのである。」ニュートンが発見の秘訣を聞かれて「いつもその問題を考え続けていたからだ。」 バカの壁の ルーツはここ?「向学心に燃えた者にカベはない!」「自分から進んで病気になった人間を直す薬などないのです。」 失敗学のルーツもここに?「『敗戦処理』によっ て人間は鍛え上げられる。」ワット曰く「機械技術の分野に一番必要なのは挫折の歴史である。私はヘマな失敗例を集めた書物がほしい。」 

  •  「本当の学力」は作文で劇的に伸びる 芦永奈雄 大和出版 2004年3月
         画期的文章論。自分を表現するということはどういうことか、人に分かってもらうには何が必要か、大学生も読むに値する。まずはこの本の第2章を立ち読みしてみてほ しい。

  • 2004年4月

  •  国産ロケットはなぜ墜ちるのか-H-IIA開発と失敗の真相 松浦晋也 日経BP社 2004年2月
           松浦氏の今年の航空宇宙学会年会パネルディスカッションでの発言に惹かれて読んでみた。本書は、我が国の宇宙政策に対する真剣な提言。宇宙開発に関連して、理学とは何か、工学とは何か、技術者とは何か、日本の政治家・官僚、アメリカの政策 等々、分かりやすく書かれている。国際協力の美辞麗句に迷わされてはいけない。競争こそが技術を磨く。著者の主張に深く共感。

  •  問題解決のための「社会技術」-分野を超えた知の協働 堀井秀之 中公新書 2004年3月 
         複雑化する社会問題解決のための「知識の構造化と可視化」に注目。俯瞰的アプローチで用いられる自己組織マップ。我々が目指しているのは設計空間に関する「知識の構造化と可視化」、そのための俯瞰的アプローチ。

  •  産業空洞化の克服−産業転換期の日本とアジア 小林英夫 中公新書 2003年2月
        日本の産業空洞化を防ぎ、「もの作り大国」を復活させよう!日本を救うのはITやベンチャーではない。中国進出を本格化させ空洞化が心配される自動車部品産業の受け皿は、 21世紀の「もの作り」産業たる航空宇宙産業とロボット産業である。 このためには、産学連携で大学が積極的な役割を果たすことが重要だ。また中国・台湾・東南アジアを含む東アジア・ネットワークを意識する必要がある。
            
  • 2004年3月

  •  アインシュタイン相対性理論の誕生 安孫子誠也 講談社現代新書 2004年2月
         1905年の3大論文に実は密接なつながりがあった。目から鱗の論評。

  •  奇想の20世紀 荒俣宏 NHKライブラリー 2004年1月
         飛行機もロケットも20世紀の申し子だった。21世紀の航空宇宙の夢はなんだろうか?

  •  God's Equation: Einstein, Relativity, and the Expanding Universe Amir D. Aczel (Audiobook)
        アインシュタインの宇宙項は結局正しかった?宇宙を記述する方程式の冒険。アインシュタインとプランクやヒルベルトとの関わりも興味深い。
  • 過去の本棚から

  •  時間の分子生物学 粂和彦 講談社現代新書 2003年10月
         最近、朝起きるのがつらくなくなった...老化の兆候だって。

  •  バカの壁 養老 孟司 新潮新書 2003年4月
         専門バカの壁を破れ(http://www.ifs.tohoku.ac.jp/edge/baka.htm)。

  •  能力構築競争−日本の自動車産業はなぜ強いのか 藤本 隆宏 中公新書 2003年6月
         航空産業も他山の石に学べ。

  •  組織戦力の考え方−企業経営の健全性のために 沼上幹 ちくま新書 2003年3月
         ルーチンワークは創造性を駆逐する、組織の機能は「ヒト」次第、ルールの複雑怪奇化とか、なるほどと思うことばかり。雑用にあえぐすべての人に。

  •  エレガントな宇宙 ブライアン・グリーン 草思社 2001年12月
         宇宙は10次元?そんなこと知らなくても暮らしていけるけど、物理学はおもしろい!

  •  サイバー経済学 小島 寛之 集英社新書 2001年10月
         ベイズテクノロジーに注目せよ。

  •  金鉱を掘り当てる統計学―データマイニング入門 豊田 秀樹 ブルーバックス 2001年3月
         データマイニング、自己組織化マップ、ブルーバックスで仕込める論文ネタ。

  •  フェルマーの最終定理 サイモン・シン 新潮社 2001年1月
         物理法則はいずれ書き換えられるかも知れない。しかし、数学の定理は絶対である。真理を求める人々の格闘。

  •  英語小論文の書き方 加藤恭子/ヴァネッサ・ハーディ 講談社現代新書 1992年
         英語を書く前にまず一読を。残念ながら絶版。古本屋で見つけたら絶対に買おう!

  •  The Selfish Gene Richard Dawkins 
         いわずと知れた利己的遺伝子の原本。論理的な文章とはどんなものか、是非英語で味わってほしい。

  • webmaster@edge.ifs.tohoku.ac.jp
    © copyright 2003 Obayashi Lab. All Right Reserved