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Index

1. 数値流体力学
 Computational fluid dynamics

2. データ同化 Data assimilation
 Data assimilation

3. 多目的設計探査
 Multi-objective design exploration

4. 不確かさの定量的評価
 Uncertainty quantification

5. 磁力支持天秤装置
 Magnetic suspension and balance system

6. 弾道飛行装置
 Ballistic range

1. 数値流体力学 Computational fluid dynamics

航空宇宙流体で問題となる乱流遷移や流れの剥離,後流渦干渉など,特に流体の非線形現象に関連する種々の未解決問題の解明と制御に挑戦,先進的な数値計算技術による工学的ブレークスルーをねらいます.大林研究室では特に数値流体力学を軸に,データ科学に基づく風洞試験との組み合わせによる融合計算技術を提案,航空機の実機レベルで重要となる流体力学の諸問題の解決に取り組んで来ました.大規模並列化による高解像直接数値計算や,流体の線形安定性による乱流遷移,乱流秩序構造の詳細解析など流体現象の詳細の理解に踏み込みつつ,最新のデータ科学技術を駆使した,航空宇宙流体工学のさらなる革新を目指しています.

1−1. 航空旅客機の層流翼開発
民間航空機が運航する際にエネルギーの損失となる抵抗のうち,約半分は空気の粘性による摩擦抵抗です.航空機周りは層流状態と乱流状態が混在しています.乱流状態では摩擦抵抗が増大しますが,工夫により乱流遷移を遅らせると,層流を維持できれば抵抗を低減できるため,近年再び注目を集めています.大規模並列直接数値計算や新しい流体安定性解析により,優れた層流翼開発を行います.

層流翼
層流翼NASA-NLF(2)-0415翼周り数値計算例
図 層流翼NASA-NLF(2)-0415翼周り数値計算例

1−2.直交格子積み上げ法(BCM)の開発
近年の計算機能力の向上が並列プロセッサ数の増加によりもたらされていることを念頭に,複雑な物体周りの数値流体解析を高速に行う,高密度直交格子による Building-Cube法(BCM) を開発しています.

BCM1 BCM2
図 直交格子積み上げ法(BCM)を使った二次元翼周りの流体解析の様子

1−3.超音速機の空力性能の改善
超音速航空機の代表的翼形状であるであるデルタ翼は,離着陸時の空力性能が,現在の亜音速機と比べて悪いことが課題とされています.本研究室では,翼の内部から空気を少し吹き出す流体制御によって空力性能の改善を試みており,民間超音速機の実現に向けた研究を行っています.

超音速航空機の実現に向けてデルタ翼周り数値計算例
図 超音速航空機の実現に向けてデルタ翼周り数値計算例

1−4.スクラムジェットエンジン内部フィルム冷却の衝撃波入射による影響解析
超音速飛行機を実現するために鍵となる,スクラムジェットのエンジン内部では,境界層と衝撃波が干渉,高温化によって壁面の材料破壊が起こることが問題になっています.そこで,エンジン内表面に冷たい空気の層を作り壁面を保護する,フィルム冷却を試みます.実験と数値計算によって,衝撃波の入射角度を変えて,フィルム冷却流れとの干渉の詳細を解析し,低下してしまう冷却効率への影響を調べています.

  
  図 スクラムジェットエンジン内部フィルム冷却の衝撃波入射による影響解析

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2. データ同化 Data assimilation

2−1.データ同化技術の開発
データ同化は,実験などによる観測値を,数値計算の初期条件や境界条件として考慮することで,計算コストを抑えつつ特定の有限時間における予測精度を向上させる技術です.従来気象分野で発展してきた技術ですが,私たちは,工学設計への応用を目指し,実際の航空機の運行時に問題となる大気境界層での外乱の影響など,不確実性の高い現象の予測に利用するための研究を行っています.


図 感度解析手法(Kang et al, 2012)を用いた風速の最適観測地点の探索

2−2.空港の風況予測と乱気流対策
航空機の離着陸時に問題となる空港の風況予測,乱気流対策のための研究も行っています.

DataAssimilation
図 空港近くの丘から発生する乱気流のフライトデータを用いた予測

菊地亮太,三坂孝志,大林茂,牛尾知雄,嶋村重治,又吉直樹,"空港周辺で発生する低層風擾乱の気象モデルとLESによる融合解析",日本航空宇宙学会論文集,vol. 61,No. 6,pp. 159-166,2013.

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3. 多目的設計探査 Multi-objective design exploration

設計者の知識や経験に依ることなく革新的な設計案を創出する方法として,進化計算とデータマイニングをベースとした「多目的設計探査」を提案し,航空機や自動車などの流体機械の設計事例への応用に取り組んでいます.相反する設計目的の下に存在する様々な最適設計案を見つけ出し,それらに潜在する特徴的な情報を機械的に抽出することで,新たな設計知識の発見に役立てています.

3−1.高効率・低騒音送風機流れの可視化と最適化
電気自動車やハイブリッド自動車の台頭により,カーエアコン用送風機には消費電力の削減(高効率化)と静粛化が求められています.これらを実現する形状を最適化するだけでなく,送風機内部に形成される流れが騒音と送風性能に及ぼす影響の解明も行いました.

3−2.流体問題におけるトポロジー最適化

構造物の性能は,その外形だけでなく,連続性のような位相を変化させることで劇的に向上します.私たちは,この最も自由度が高い位相(トポロジー)最適化を流体問題に適用することで革新的流路デバイスの設計を行っています.特に,進化計算を取り入れることで,より多くの設計案を比較できる実用的工学設計のための研究を行っています.

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4. 不確かさの定量的評価 Uncertainty quantification

実世界に見られる流体現象は,無数の「不確かな」物理要因が複雑に絡み合って発生します.流体現象の再現を目的とした数値解析は通常,こういった不確かさの存在を無視して単純化されることが多く,その結果は実現象とかけ離れたものとなります.また工学設計においても,製造誤差や環境揺らぎなどの不確かさが存在し,設計対象とする製品の品質,すなわち設計の信頼性に大きく影響します.本研究では,実世界に存在する不確かさを数理モデル化し,流体解析および設計に取り入れ,不確かさに対する物理量の挙動を定量的に評価することで,複雑な流体現象の正しい理解および実用に耐えうる工学製品の創出を目指しています.

4−1.大気の不確かさを考慮したソニックブーム解析
超音速機が上空を飛行すると,機体の各所から圧力波が発生し,大気中を伝播する間に整理統合されて,地上で爆発音(ソニックブーム)を引き起こします.本研究では,大気状態(温度・湿度・風速など)の不確かな揺らぎによって,地上でのソニックブームの波形に及ぼされる効果を,確率論的に予測しています.

5. 磁力支持天秤装置 Magnetic suspension and balance system

磁力支持天秤装置(MSBS)は,磁気浮上の原理により,磁気力によって風洞試験用模型を気流中に支持,同時に模型に作用する空気力を測定する装置です.通常は,模型を支える機械的な支持装置と気流の干渉の影響を避けられませんが,MSBSを用いて,その影響を取り除いたより高度な風洞試験を可能にするための研究を進めています.
本研究室は測定部の大きさが異なる2つのMSBSを運用しています.0.1m直径のMSBSは超音速流れでの磁力支持が可能です.また,1m直径のMSBSは世界最大規模,東北大学流体科学研究所が所有する低乱熱伝達風洞に取り付け可能な大型のMSBSです.より大きな模型の高精度空力計測や姿勢変化を伴う実験を可能にするための研究開発を行なっています.

磁力支持天秤装置での空力性能測定の様子 1.0-MSBS有翼(AGARD-B)模型 磁力支持天秤装置での空力性能測定の様子 0.1-MSBS飛翔体(Cone-Cylinder)模型
図 磁力支持天秤装置での空力性能測定の様子,左:1.0-MSBS有翼(AGARD-B)模型,右:0.1-MSBS飛翔体(Cone-Cylinder)模型

非定常空力性能測定の様子
図 非定常空力性能測定の様子

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6. 弾道飛行装置 Ballistic range

東北大学流体科学研究所 衝撃波関連施設 「弾道飛行装置」へのリンク

火星大気圏突入を想定した,超音速パラシュート開傘時のカプセルの空力特性取得・評価を行いました.弾道飛行装置でカプセル模型の射出を行い,シュリーレン光学可視化連続画像を取得,カプセル周りの流れ場構造と後流の計測・評価を行うための手法開発をおこなっています.そのほか,隕石が落ちる際の分散の挙動・メカニズムの解明のため,単純な球模型を用いた平板衝突の実験も行っています.

弾道飛行装置の模式図
図 弾道飛行装置の模式図

弾道飛行装置の模式図
図 弾道飛行装置を用いた超音速パラシュート開傘時のカプセルの空力取得

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