女子学生の方へ


本GCOEプログラム事業担当者の多くが所属する東北大学流体科学研究所は、創立以来66年間、流体機械という無骨な専門性のため、研究者のほとんどが男性でした。女性研究者が一人もいない時期が長く続いたこともありましたが、現在では2名の女性助教が研究・教育活動で活躍しています。2人は子育てや料理教室、園芸、音楽演奏など、それぞれ自分が「女性」であるというアイデンティティを大切に生き、同時に、世界の最先端を走る研究所の一員として研究にたずさわれることに生きがいを感じています。2人は研究への熱い情熱と、女性として幸せに生きること、いずれも譲ることのできない2つの思いを胸に、女性科学者としての道を歩んでいます。

一昔前の女性科学者によくあった、女性としての楽しみの多くをあきらめ、自分は男性なんだと言い聞かせて研究のみに打ち込んだ時代は終わりました。結婚をし、主婦となり、家事や育児も行いながらも、研究アシスタントの派遣やベビーシッター援助制度など国や大学からの数々のサポートを受け、主婦業と研究職を両立し、男性科学者同様に活躍することが可能となっています。

最近までは、見過ごされていたり、あまり重要視されていない時代もありましたが、科学や技術の分野には女性らしい感性や考え方が非常に重要であることは今では広く認められています。本グローバルCOEでは、女子学生の皆さんが、将来、博士課程に進学し、やがて私たちの仲間として流動ダイナミクス研究の最前線で活躍されることを支援し、応援しています。

研究内容

ターボポンプに発生するキャビテーション振動現象の解明

現在、日本で運用中のH-IIAロケットは、気象衛星ひまわりや、衛星放送、地上観測、天体観測といった様々な目的の人工衛星を宇宙空間に送り届けています。そのロケットのエンジン内にあるターボポンプと呼ばれる場所では、液体燃料が気化する「キャビテーション」という現象が発生します。このキャビテーションはポンプの軸や燃料に激しい振動(キャビテーション不安定現象)を引き起こし、ポンプ性能の低下や損傷、時には重大な事故を引き起こすこともあり、大変な問題となっています。私はこのキャビテーション不安定現象の振動特性や発生メカニズムの解明を、コンピュータを用いた数値解析によって試みています。ターボ機械、ロケットエンジン、という男性だらけの分野ではありますが、コンピュータプログラミングという比較的体力を必要としないアプローチによって、紅一点、現象解明に果敢に挑戦しています。

視覚解析支援環境の開発

様々な現象を解明するために、実験計測や数値計算によって大量のデータが生み出されています。このようなデータは膨大な数値データであるため、数字の羅列だけではデータがもつ情報を理解することはとても大変です。そのため、データがもつ情報を画像として表現(可視化)し、視覚的にデータを解析する視覚解析が広く用いられています。たとえば、数学でグラフを書くことも可視化にあたります。視覚解析は、医療現場や、工業製品の製作、基礎的な現象の解明など様々な場所で役立っています。しかし、与えられたデータからどのような画像を生成するかによって、得られる情報も違ってしまうので、知りたい情報がわかるような画像を作成することは、とても大変です。私は、科学者や技術者が効率的に効果的な画像を作成し、必要な情報を素早く的確に得られるような視覚解析支援環境を、女性ならではセンスを生かして開発しています。