固液界面熱輸送特性の解析と各種材料のTIM適用性探索 小原 拓

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小原 拓( 東北大学 )  メンバーページ

研究目的

  • 液体とソフトマター(SM)を中心に熱界面材料(TIM)として有望な媒質を探索し、媒質のマクロ熱物性と媒質-固体表面間の固液界面熱輸送特性(マクロには熱抵抗)を分子動力学シミュレーションにより解析することにより、固-液/SM界面で支配的な分子スケール因子を解明する。
  • ダイナミックコーティングについて、コーティング層分子の介入による固体接合界面の熱抵抗を解析する。
  • 実験グループとの連携により互いに先導-検証を繰り返し、結果を対照しながら進める。


固液界面の例:水-SiO2界面へのIPAの吸着[1]。界面近傍で拡散係数が大きく低下。
表面性状(結晶面・終端)の影響大。
[1] Y. Naruke, S. Kosaka, G. Kikugawa and T. Ohara, Int. J. Heat Mass Transfer, 84 (2015). 


ソフトマターの例:脂質二重膜[2]。熱伝導率の世界初出データ。
熱伝導率の異方性大 (2.5~5倍)。単層膜間の界面熱抵抗大(脂質分子種に依存)
[2] T. Nakano, G. Kikugawa and T. Ohara, J. Chem. Phys., 133 (2010). 


液体新素材の例:イオン液体[3]。静電相互作用による熱エネルギーの輸送は(意外に)小さい。
(分子内共有結合によるエネルギーの伝搬が卓越)
[3] J. Haneda, G. Kikugawa and T. Ohara, Asian Thermophys. Properties Conf. 2016. 

全体計画の中での意義

  • 大きな自由度で熱的特性を設計することができ自己修復能をもつSMを新しいTIM材料として利用する方策を探る。
  • 固体表面間距離(TIM厚さ)が小さくなったとき重要となる固体-TIM間界面の熱抵抗を支配する分子動力学メカニズムに介入し、熱抵抗の低減につなげる。
  • ダイナミックコーティングによる「やわらかな固体表面」が固体表面直接接触による界面熱伝導を強化する効果を追求する。

研究計画と方法

  • 系統的な分子動力学シミュレーションを実施し、その結果を解析する。
  • (1年目) 各種の特徴的な液体に対して、各種固体表面との界面熱抵抗の解析
  • (2年目) 上記の解析を継続しつつ、ダイナミックコーティングの解析を開始。
  • (3年目) ダイナミックコーティングによる固液界面熱輸送特性の解明。交互累積膜などSMの解析開始。
  • (4年目以降) SMなどを中心にバルク熱伝導特性及び固体との界面における熱輸送特性を解明。全ての成果を総合的に活用した界面熱抵抗低減技術確立

目標

  • (3年間) 典型的な固体-液体/SM界面について、熱輸送特性の支配パラメータを抽出する。
  • (5.5年間) 新しいTIM材料と固体-TIM(液体/SM)間・固体-固体間界面熱抵抗低減法の提案と特性予測

参加研究者

  • 小原 拓(PL, GL) 東北大学流体科学研究所 教授
  • Donatas Surblys  東北大学流体科学研究所 助教
  • 川越 吉晃     東北大学流体科学研究所 特任助教