流体研から社会へ 〜社会で活躍する先輩の声〜

研究室での経験とご縁が今の仕事に生きる

■航空分野を中心に視野を広げたい

学部生の時は別の大学の航空宇宙工学科に在籍していましたが、大林茂教授のもとで研究したいと考え、東北大学の大学院に進学しました。視野を広げたいと考えており、大林研究室では航空機に限定されない幅広い研究に取り組んでいるところに魅力を感じました。また最適化やデータマイニングなど、航空分野の中ではユニークな研究をしている点にも惹かれました。修士課程の在籍時には、ハードディスクの回転時における筐体内の流体加振力や、流体科学研究所内の横断プロジェクトだった血流を対象とするデータマイニングによるデータ解析など、流体に関するさまざまな研究に取り組むことができました。

■火星飛行機用プロペラのブレード断面形状の空力最適化に取り組む

  • 博士課程では、JAXAと共同で火星飛行機の研究に取り組みました。火星は大気が薄く地球と環境が大きく異なります。それらを考慮した推進効率の良いプロペラブレード形状を目指し、遺伝的アルゴリズムによるブレード断面形状の空力最適化に関する検討を行いました。
    研究室は人数が多かったため、多様な価値観に触れられたことがよかったと思います。また流体研は流体力学の分野における世界でも有名な国際会議の1つである『International Conference on Flow Dynamics(ICFD)』を主催していますが、そういった会議の際に海外からの訪問者をアテンドさせていただいたことも、貴重な体験になりました。

■唯一航空分野が学べる国立高専に着任

  • 現在勤務している沖縄高専は、国立高専では唯一、航空関連の知識や技能を学ぶことができるプログラムを提供しています。航空分野を専門にしているということで声がかかり、3年前に着任しました。ここでは航空分野で働いたり研究したりしている方を講師として招いたり、共同研究などをしています。そんな時には流体研の時のご縁が生きていますね。現在は新型コロナのためICFDはオンライン開催なのですが、私の研究室に配属された本科生や専攻科生の学生たちにとっての発表機会の場にもなっています。いずれ現地開催になれば彼らと仙台に行こうというのが研究をする上でひとつのモチベーションになっています。

■さまざま人の意見とご縁を大切にしてほしい

  • 高専生の皆さんには、さまざまな人とのつながりを大事にしてほしいですね。進路について考えるときには周りの人の意見を参考にすると思いますが、積極的に身近な人以外にもコンタクトを取ると、また違った世界が見えてくると思います。多くの意見を参考にしながら、自分にとって魅力的なものは何か、そしてそれがなぜ魅力的なのかを考えていけば、自分の選択はきっと後悔のないものになるはずです。

【Profile】
沖縄工業高等専門学校
機械システム工学科
講師 森澤 征一郎
2008年に日本大学理工学部航空宇宙工学科を卒業。同年に東北大学大学院工学研究科に進学、2015年に博士号を取得。日本原子力研究開発機構の博士研究員、鳥取大学大学院工学研究科機械宇宙専攻の助教 を経て、2019年より現職。